第13話 そばに付喪神を
天照大御神の社。
縄文は
他の付喪神達からの賛同を得てきた
人をたぶらかしたらどのみち神にあるまじき行為と高天原から罰せられるのだから、神であろうと
ならば、名ばかり神として知られるよりも、人に感謝される仲間が大勢居る方が付喪神として鼻が高いだろうという
礼装の縄文の後ろに、礼装など持っていない普段着の
ただ、
『愛される、あなたの付喪神』
そのタスキには、
以前の『一家に一人、付喪神』から変えたのは、単に付喪神の数を増やしたいわけではないのだと天照に判って欲しいという
「僕は
本殿で天照が来るのを二人は静かに待っていた。
しかし、来たのは月読だけ。
いつもは天照が座る座椅子に座り、平伏した二人に顔をあげるよう伝える。
「付喪神協会からの陳情は、全て私が受け持つことになった。
月読の前まで、膝を使って進み、
「付喪神の
「ある人間は、現在の気持ちを込めるため、ある人間は、過去の苦い記憶を忘れないため、ある人間は、未来の自分の生きがいのため、モノを通じて自分自身と向き合っていると気付きました。
また、モノとの絆が深い人間が大勢居ると判りました。
付喪神には、そういう人間の手助けができる可能性があるとも気付いたのです。
これは長い時間を経たモノを依り代としていた時代の付喪神であれば判らなかったことです。
神が簡単に増えるのは宜しくないと言われました。
確かにそうなのだろうと思います。
ですが、であれば、付喪神の進むべき先は、神として崇められなくても、たとえ
付喪ベビーへの影響のこともありますから、すぐにとは言いません。
ですが、影響を観察した結果、問題ないようでしたら、是非、付喪神が増えることを許して頂きたいとお願いいたします」
月読から目を逸らさず、自分の思いを
それは面白がっているようでもあり、親から子供に向けられる温かい笑みのようにも縄文には見えた。
「
縄文に顔を向けて月読は話す。
「面白いことを考えるな。
「ハッ、仕事熱心な真面目な
再び
「おまえの意見は面白い。そして認めても良いが、いくつかの条件が必要だ」
「どのような条件でしょうか?」
「一つ、人に悪さをした付喪神は滅せられる。これは当然だな。
二つ、人から離れた付喪神は依り代からも離れて霊体に戻り、再び依り代を探す。
新たに生まれる付喪ベビーと合わせて総数は百体までとする。
但し、既に付喪神となっている者達はこの範囲ではない。
三つ、
どうだ? この条件を呑むなら、おまえの意見を認めよう」
「謹んで」
「判っておると思うが、新たなことを始めるのだ。予想外の問題が起きることもあろう。その時は取りやめになる覚悟も持っているのだぞ?」
そう言って席から立ち、笑顔の月読は去って行った。
フウッと息を吐き、身体から力を抜いて縄文と
「ハッハッハッハッハ、良かったな!
「ええ、本当に緊張しました。まさか僕が監視役になるとは思っていませんでしたよ」
「ついでに、協会会長職もやらんか?」
「いえいえいえいえいえいえ……とんでもありません。会長は縄文様にしか務まりませんよ」
チッと舌打ちする音が縄文から聞こえる。
(これからの付喪神は、持ち主を応援し支える。
依り代から離れても、持ち主の思い出を抱いていく。
これからの付喪神は、持ち主との絆を大事にするんだ)
そして勝手にこれからの活動を心の中でこう名付けていた。
『あなたのそばに付喪神をプロジェクト』
――これを知ったら
そう想像した
・・・・・
・・・
・
「もっとセンスを感じるネーミングはないの? 縄文様といい、あなたといい、どうしてそうなのかしらね」
働く者達のやる気を刺激するようなネーミングが欲しいわよとプリプリする
「これからも手伝ってくれるかい? いや、
「それは尊敬しているから?」
「ああ、もちろん尊敬しているし頼りにしているからだよ」
「で、そろそろ惚れた?」
「それは内緒だなぁ……」
「惚れたならはっきり言うって約束したじゃないの」
「さあ、これから忙しくなる。
「月読様から役を貰ったようだけど、
「ああ、構わないよ」
「さあ、今度はどんな持ち主にあおうか? 楽しみだね」
――了――
アナタのそばに付喪神を 湯煙 @jackassbark
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