それに、名前を付けてはいけない

「連続殺人事件」という言葉がある。
言うまでもなく、同一犯によって短期間に連続して行われる殺人事件を意味する単語である。
ホラーやミステリなんかではよく耳にする、定番とすら言える概念ではあるが、現実でこれを耳にすることはあまりない。
「一人の人間が連続して誰かを殺す」ということは中々大変なことであり、そうそう起きることではないからだ。
しかし、殺人事件自体はきっと毎日、世界のどこかで起きているのだろう。
今日も明日も明後日も、どこかで誰かが殺されているのだ。
ならば「地球人類は常に連続殺人事件を起こしている」と言っても良さそうなものだが、そうは言われない。
何故か。
それが同一犯によるものではないからであり、起きる時間も場所もバラバラで、つまり連続していないからだ。
しかし、そもそも「連続している」とはどういう状態なのか。
人は何によってそれを「連続している」とみなすのか。
例えば、一つの場所で短期間に集中して起きた「同一犯によるものではない」殺人事件を、人はなんと呼ぶのだろう。

この物語は、恐らくそういう話である。

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