驚異の読者巻き込まれ型学園ホラー

 自分の頭の後ろに何か渦巻いている気がして振り向いてしまう。

 このお話を読んだ方ならこの意味が解る──というより実感としてこれと似た感覚を肌で感じているはず。

 よく出来た怖い話は、それを享受する人間の普段オフになってるスイッチをオンにする。
 例えば、物音に敏感になる。
 例えば、カーテンの隙間が気になる。
 例えば、洗髪の時に浴室に自分以外の誰かの気配を感じる。

 仮にこれを「霊感スイッチ」と呼ぶ。僕は文章でも映像でも、この霊感スイッチが入る作品は「いいホラーだな」と記憶する。

 ところがこの「ムルムクス」は読者の霊感スイッチを入れるにとどまらず、読む者を物語世界の怪異に「直結」する構造になっている。
 物語を読み、それについて語る我々はそうした時点で「ムルムクス」に取り込まれ、その一部となってしまう。

 後からまとめて読んでもその独特の読後感は変わらず鮮やかだろう。
 だがもし連載途中にこのレビューを目にした人は是非とも今すぐ読み始めて、「ムルムクス」についてイメージを持ち、語り、その名を呼んで欲しい。
 「ムルムクス」に取り込まれリアルタイムに「ムルムクス」の一部となる体験をして欲しい。

 それはきっと滅多にできない、想像以上の生々しさを伴った「物語の一部となる」という経験として、長く記憶に残るものになるはずだから。

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