第8話 鉄壁の守り

…話していてふと、疑問に思ったことがある。

鷲が喋れるのが彼の、彼らの「普通」になるのならば、他の鷲も喋れるのだろうか?鴉や雀などのように鳴き声で会話するのではなく、人の言語で会話をするのだろうか。

それも聞いてみようかとも思ったが、どうやら満腹になった後の話は彼にとって眠くなるらしい。半目で起きているかも怪しいほどだ。

…鷲って寝るのか?


「…あの~、鷲さん……?」


手をひらひらと前で振るとカッと目を見開き慌てるようにバサバサと翼を動かしいくつかの羽を落とした。

それよりも素早く突き出されたクチバシが手に刺さりそうで、反射神経というものは全くもって働かず瞬時の判断とやらはなんなのだろう、ピクリとも動かせなかった。鷲が手前で止めてくれたから怪我はしなかったものの、今でも心臓がドクドクと脈打っている。


「なんだ、危うく刺すところだったではないか!人を起こす時は慎重にだな…!」


「……ご、ごめんなさい…」


鷲の方も焦ったらしい、先程から動きに落ち着きが見えない。聞きたかったことよりも恐怖と不安で体も口も上手く動かず、やっと思いで動かせば謝罪の言葉しか出なかった。

…静まり返ったリビングに2人というこの状況は中々にキツいものがある。鷲もどことなく元気が無く…………えっ、寝てる…!?


「嘘…さっきの今で寝れちゃうの…?」


どういう神経してんだよ、と突っ込みたくなるが、そのお陰で恐怖も薄まってきた。小さく笑えば、電気を消して自分もベッドに潜り、心の中でそっとおやすみなさい、と唱えた。


結局その後、話し合いは行えていない。どうも話しにくいというか、どうせ何も教えてくれないという諦めからも理由で自分自身放っといているところがあるんだろう。

鷲も何も言わないし、いつものように我中心といった感じで振舞っているから、私も何も気にしないようにしている。


(…でもあれは、鷲のくせして警戒心をなくしたのが悪いと思うんですけどね。)


そんなことを言ったらまた怒られちゃうな、と考えながら次の休みの計画を立てていた。

実のところ、旅行やお出かけには誘われている。以前の自分なら喜んで行ったところだろう……しかし!私1人分に足される鷲の食費、割られた食器の買い替えや傷つけられた家具の表面上の繕いなどで既にこれからの生活費に危機を感じていた。


(それに、余計な事しかできない鷲を置いていくわけにもいかないし…)


いっそのこと本当に野生に返したいぐらいだ。鷲なら1匹でもやっていけるだろうに、何故こんな人里に下りてきたのか……今でも謎である。もはや野生の心などなく、寝転がりくつろぐ姿が定番になってはいるが。

…あ、そういえば。


「この間ネットで調べたんですけど、貴方ってオオワシの仲間なんですか?」


そう、鷲とはいえど沢山の種類がいるのだ。ハクトウワシやオジロワシ、イヌワシなど。

イヌワシなら日本にも生息しているらしいが、オオワシが日本にくるのは冬の北海道や本州北部らしい。今は一応、春なんですけど…


「…オオワシ?儂に鷲の種類があるとでも思うたか?」


カッカッカ、と特徴的な笑い方をしながらニヤリと不敵な笑みを見せられる。また純粋に知らないだけかとも思ったが、からかわれているだけだと分かった。


…なんだか、本当に手駒にされていってる気がする。

はあ、とため息をひとつ吐くことしか、今の私には返答のしようがなかった…


​───────

このお話を読んでいただきありがとうございます。また次の更新をお待ちください。

ペコリ((・ω・)_ _))

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