第11話 敵で仲間

「…お前は!」


その〝何か〟を判断するのは容易なことだった。真っ黒な毛並みにぎらりと鋭く睨みつけるような瞳。同じ鳥類としては誰でも知っている筈だ…そう、鴉である。

主に昼間近くに鳴いているのを耳にするが…朝から活動的な奴だ。


「…随分と腑抜けちまったみてぇだなぁ、鷲さんよ」


その言葉にカッとなり反論する。きっと、これは相手の想定内の言葉だろう。


「巫山戯るでないわ!儂はまだ腑抜けてなどいない!!」


「そうかい、俺からしたら随分と威厳がなくなったように見えるがな」


はあ~あ、と残念そうに息を吐きながら、怒りっぽいのが自分の弱点だと気づけていない鷲に笑いが込み上げると、そう言いたげな瞳に余計に苛立ちの感情が募っていく。

…貴様に儂の何が分かるのだと。


「第一に、何故キサマがここにいる!?ここはお前の持ち場ではないだろう!」


「いいのか?そんな事を言っちまって。そろそろご主人様が帰ってくる時間だろ」


ハッとなって耳をすましても、いつもの靴の音は聞こえてこない。なんだ、大丈夫じゃないか。と思い振り向いたら既に鴉はいなくなっていた。


「何だったんだ、あやつは…」


…確かに少し怠けていたかもしれない。上への報告も少し隠している部分があり、全てにおいて反論できるという訳でもない。

だからなのだろうか、そういう弱い所を突いてくる鴉の事が嫌いなのだ。なんでも見透かされているような、性格的にも話しづらい、いっそ話しかけてこないで欲しいと願うぐらいには毛嫌いしている鴉のことが。


「…もう少し、しっかりせねばならぬな」


残りの魚を一気に喉に流し込んで自分の観察対象である人間、雫の帰りを待った。


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今回もお読みいただき、誠にありがとうございます!感謝の気持ちでいっぱいです。

また次の更新をお待ちくださいませ。

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