第10話 謎の訪問
午前8時。
カーテンにより陽の光を遮られたリビングは薄暗く、掛け時計が一人寂しく呟くように秒針を動かしている。
そこに1匹、自室から出てきた鷲が何かを見つめていた。
「……む?なんだあれは」
机に伏せ、おそらく夢の世界であろう雫の側から1つの強い光が灯っていた。不思議な光を怪しく思い、鷲は伺うように近づいていく。
そこには文字の羅列が並んでいた。
「これが人間が巧みに使う“ぱそこん ”というものか……?」
いつしか耳にしたことがある。人間は精密で奇妙なこの道具を使用し、あらゆる仕事を行なっているのだと。
そして乗っ取られたように手を動かし、吸い寄せられるように画面を凝視する。
(そして“社畜 ”になる……だったか?)
その話を聞いた鷲は、それを「呪いの道具“ ぱそこん”」と認識し密かに恐れていた。
画面を見すぎないよう、鷲は半目で映し出されていた文字を読み取ろうと試みる。
………が、文字の読み書きが出来ない鷲はすぐに諦めた。
「それより………」
雫を一瞥した鷲は、フローリングに傷が付くという理由で作られ渡された自分専用の靴下を鬱陶しく思いも律儀に履き、歩きにくさによろけながら雫の寝室へと躊躇なく入る。起きていたら「乙女の部屋に勝手に入るなんて!」と言われそうだが、幸い雫は熟睡していて起きる気配はない。
鷲の予想通り、雫の自室は女性らしいとも綺麗とも言えず、必要最低限の物しか置いていなかった。
床に転がる雫の私物を華麗に飛びよけ、鷲はベットに着地する。
布団の下敷きになっている薄手の毛布をくちばしで器用に引っ張り出し、そのままズルズルと引き摺りリビングに戻っていった。
雫のもとに戻ってきた鷲は少し悩み、頭の上で口を離し全身を覆うように雑に毛布を掛ける。
それに満足した鷲は腹を満たすため、いつも決まった場所に置いてある食事の所へ歩いていった。
皿の上には見知らぬ魚の切り身がぽつんと置いてあり、隣には平の皿に水が入っている。
マグロの姿がどこにも見えないことに、鷲は「またか……」と肩を落とした。
「マグロは高いんですよ……」と財布の中身を見つめ表情を暗くする雫が頭に浮かぶ。
居候ができ、さらに大食いか育ち盛りなのか、かなりの量を食べるため食費が馬鹿にならなくなってきたのだ。
そんなことも知らない鷲は駄々をこね雫を困らすばかりである。
終いには「なら自分で海から取ってきてください」と真顔でバッサリと切り捨てられた。
飯にあり付けるだけマシか……と咀嚼していると、鷲の背後にあるカーテンが強風によりバサバサと大きい音を立てた。
それを耳にした鷲は魚を口に運ぶのを止める。
(窓は………閉まっていたはずだが?)
不信に思いゆっくり振り返った鷲が、何かを目で捉える。
「よぉ、久しぶりだな」
よく知る声と顔の“何か”に、動揺して冷や汗が頬を伝った。
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今回でなんと!!
めでたく10話目となりましたー!!!!
これからも、この作品をよろしくお願いします。
ここまで読んでくださりありがとうございました!!!
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