七十三の節 華麗なる王者、プラッティン・マクシム・カネル。 その三
聞き慣れない響きに反応した者は「それは何か?」と、アラームに問うために息をつぎ、視線をアラームに向け、知識欲を満たそうと様々に動いた時。
「カネル様」
それぞれに発せられた気配を封じるかのように、アラームは静かに正面に座する名の持ち主を呼んだ。
プラッティンを含め天幕にいる、ほぼ全員が腹に据えていたであろう疑問を置き去り、アラームの挙動に備えていた。
「こちらの
アラームの言葉に、次はプラッティンへと視線や意識が注がれた。その姿は、純白の被毛が惜しみなく
柳と竹材の外壁に支えられている割りには大きな白の天幕。プラッティンが野兎と変わらない姿を保ち、
カネル君主都市を示す三種の旗が、梁もない場所から垂れている仕掛けの正体は、洒落た照明代わりの
「きゃふん! そうであった!
小さな白い手で顔を覆い、雪原に似た敷物に突っ伏して恥じらいを全身で表現していた。
「カネル様、失礼致します」
醜態を
「出直して参ります。少々、お時間を頂戴します」
非公式とは言え、場に
その様子を見ていた
「カネル様の愛くるしさって、反則だよな」
語る相手を限定せず、
「アラーム、このやり場のない思いの
アラームの右隣で、口先以外は
薄い肉と張りの良い白皙の
「
「くふっ。た、
「お気を確かに、くっふふふ」
兄に
事態を目にしてしまった者は皆、招いた側も、招かれた側も等しい状況にあった。心配そうに身を乗り出しているか、笑いを封じようと努めるあまり肩を揺らしているか、顔ごと視界から外しているか、素直に声を立てているかのどれかだった。
◇◆◇
「これで、何とか勘弁してもらえるかな? アラーム殿」
相変わらず、
何より主張しているのは、ラヴィン・トット族の代名詞とも言える肩や腰に下げている
「素敵なお召し物です。特に、
「分かってくれるかね。商工集団マーガレットの最新技術を凝らした
弾んでいた言葉は、やがて
飴細工の照りを連想させ、モザイクタイルのように並べられた表面は、冬に向かう寒さから守ってくれそうな暖色系でまとめられている。
しかし、その腕が重みで沈むように膝に落ち着いてしまう。プラッティンの
「そ、それはそうと。席を外している間、有意義な時間が流れていたそうであるな」
プラッティンは明らかに話題を
席を外している間の様子を、何故か把握しているプラッティンの言葉には言及する事なく、
「スーヤ大陸の偉大なる双璧、
体裁を整えたプラッティンは、突如として手の内を明かすような発言をした。先程の不可解な情報の把握。初対面であるはずの
単なる愛らしい毛玉ではない事を。プラッティン・マクシム・カネルが持つ、最大の武器を抜き放つ気配を漂わせ始めた。
あかときのうた 八住 とき @convallaria
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