七十二の節 華麗なる王者、プラッティン・マクシム・カネル。 その二
正面を見据えた
「落ち着け、
アラームから受けた刺激によって、
「何とお美しい瞳なんだ。さすがはマフモフの王者でいらっしゃる」
「鏡を見ろ。同じ物が付いているぞ」
「カネル様の元にあるからこそ尊い配色なんだよ。本当に、お前さんは分かっちゃいねぇよ」
「
「失礼致しました。この
アラームの挨拶には、いくつもの不審点はあるが、背後にいた全員が見事な姿勢の裏側を見た事だろう。正面にいたプラッティンを始めとする、十六人の少年達が余さず視界に入れた事だろう。
かしこまる。または、正座と呼ばれるアラームの座り方。口上の後、奇跡の触れ心地の白い床に、これまた白い手袋に包まれた両の手を着く。同時に、背筋を伸ばしたまま腰から
尻も顎も浮く事はなく、
見る者によっては卑屈に。ある者によっては一切の隙がない最上級の座礼に映えるアラームの姿勢に、即座に反応した者がいる。
「う、うわわっ。いかがなさいました? カネル様?」
胸元の黒と赤の毛皮の内側で、純白の毛玉がネイトの問い掛けから脱した。
その姿は、アラームに向かい小さな白い手を同じ色の敷物に埋もれさせながらも、堂々とした礼節を
「まずは、
身を起こし、正座したままの姿でプラッティンが言い放ったのは、信頼を置く部下の扱いについての礼だった。
「アラーム・ラーア殿は、実に見事な
アラームの態度に、オ・ニギ族との関わりを問うプラッティンは言葉を続ける。
「入口では、正面の〝
プラッティンは抵抗も見せず、生命線とも言える
「それに、皆様をお招きしたのは、個人的な情報収集のためなのだ。なので、討伐隊北部方面第四部隊ウェルグ・ヴァリー中隊士長の部下の方々も、脚も言葉も崩して遠慮なく発言して欲しいのである」
穏やかに、気さくに。プラッティンは、アラームやカーダー達が作る人垣の隙間から見える、後方に座するヴァリーと腹心達にも
立場を超え把握しているプラッティンの情報量に、ヴァリーを始めとした面々は驚きを緊張にすり替えたようだ。ヴァリーを筆頭に、腹心一同は深い座礼を返答に代えていた。
「
プラッティンが差しているのは、今回テフリタ・ノノメキ都市の捕虜護送・調印のために形式だけのお飾り集団に他ならない。
プラッティンの容姿と舌足らず風の口調で和んで聞こえているが、本来は過去に使用されていた辛辣な言葉だ。相手の愚行を、心の底から見下げ果てる時に使用するものだ。
立場が上になる程、直接的な表現はしない。故事や歴史の断片を用い物事の意図を濁し、相手からの言質を誘発し、あるいは墓穴を狙う。
「
種族の特徴でもある、やや外向けに配置されている
「私には、親友がいました。初めて親友と呼べる相手でした」
整い過ぎる唇に、霧に霞むような輪郭が曖昧な割りに説得力がある響きがある声を乗せ、アラームは一言を置いた。
「
突然。アラームは、どこかに書かれているような
「私の親友が描いた旗が今に受け継がれ、カネル様の元で拝見が叶った現実に、感慨を深めておりました」
アラームは、記憶の一部を静かに語り終える。そこに、悲哀や過去にあった事象を漂わせる素振り、同情を招く気配は一切なかった。
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