第46話匂う宮5

薫の君は妊婦のしるしの腹帯に気が付いて、


それが痛々しかったばっかりに、すんでのところで


思いとどまりになられました。





かたずをのんで見つめていた天空の源氏は、


「何と間抜けな男だ薫は」


柏木も渋々うなづいています。





翌日、久しぶりに突然匂宮がお見えになりました。


中の君は昨日そんなことがあったのでお召し物は


すべてお着換えになっておられます。





心の内も開き直っていつになく匂宮にお甘えになります。


匂宮も御無沙汰を申し訳なく思っています。





ところが薫の君の移り香がたいそう深くしみついています。


「ななな、何としたこと?この移り香は?これはこれは情けない」





中の君は申し開きもできずに泣くばかり。


相手が薫の君なので口惜しいやらおかしいやら、


口ではさんざん言いますが匂宮の心は複雑です。

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