第43話匂う宮2

2月にいよいよお引っ越しとなりました。


匂う宮は今か今かと待ちわびておいでです。


二条の院の立派な御殿にお車が到着いたしました。





匂宮はお車のところにご自身で歩み寄られて


中の君を抱きかかえおろして差し上げになりました。





これには世間の人々も驚かれ、匂う宮はこのお方に


よほどご熱心だということが知れ渡りました。





薫の君は一方ではそれを喜びながらも内心、


馬鹿なことをしたものだと複雑な気持ちでおられます。








このころ夕霧の右大臣(薫の兄)は匂宮が次期東宮候補なので


自分の六の君を差し上げるご予定です。





そこに早々と中の君をお連れされたので面白くありません。


なんとかせねばと企んでいます。





そうはいっても匂宮は中の君を溺愛されているようですが、


薫の君との仲ですから。気は許せません。


よそよそしい二人を見かけて匂宮は、





「なんと、御簾の外にお座りとは。薫の君は前々からちょっと


怪しいほどお世話をされておられる方ですよ。もっと親しく


御簾の中へ。どうぞどうぞ昔語りでもなさってください」





と言いながらも、





「そうはいってもあんまり気を許されるのもどうかな。


あちらに全く下心がないとも限りませんからね。ふふふふ」





と言われながら参内されて行きました。


今更よそよそしくはできません。


中の君は複雑な気持ちになられます。

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