概要
モンゴルに国を売った男、南宋の宰相賈似道。はたして、その真相は?
わしが賈似道(かじどう)だ。南宋の後期、理宗・度宗・恭帝と三代の皇帝に仕え、紛れもなく権勢をふるった。だから権臣とよばれても文句はない。だが、奸臣だ、売国奴だといわれれば、異議がある。わしは奸臣などではない。むしろ帝の御為に、書画などの文化財を後世に伝え、税制の改革を推し進め、朝廷の腐敗を正した忠義の臣だし、売国どころか南宋を二十年延命させたのはこのわしだ。漢文化に造詣が深いフビライならば、漢の大地を破壊と殺戮から守り、漢の文化を引きついでくれると見込んで、かれに後事を託したのだ。
十五年前、南宋はモンゴルに包囲され、風前の灯だった。ところが敵の皇帝モンケ・ハーンの急死でモンゴル軍は撤退した。わしは帝の弟フビライと「密約」を交わし、急遽、停戦し、かれの北帰を助けた。モンゴルの後継者ハーンとな
十五年前、南宋はモンゴルに包囲され、風前の灯だった。ところが敵の皇帝モンケ・ハーンの急死でモンゴル軍は撤退した。わしは帝の弟フビライと「密約」を交わし、急遽、停戦し、かれの北帰を助けた。モンゴルの後継者ハーンとな
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!稗史野乗の面目躍如──南宋滅亡の大罪人とされた宰相=賈似道の言い分
いきなり読めなかった方にはすみません。稗史野乗は「はいしやじょう、正史と異なり民間で編纂された歴史書」です。一つ賢くなりましたね。って煽ってどうするの?
※
冗談はさておき、本作の主人公であり語り手の賈似道は岳飛を殺した秦檜ほどではありませんが、中国史上の大罪人とされる人物です。フビライ・ハンに屈さず『正気の歌』を書いた文天祥と対置されることが多いかも知れません。
つまり、大変に評判が悪い。
そもそも、宋という国は文尊武卑、対外戦にあたっては大層に弱い国でありまして、契丹族の遼に現在の北京周辺を含む燕雲十六州を奪われ、女真族の金に江南に追われ、ついに蒙古族の元に併呑されてしまい…続きを読む