実は私……私、あの、この人の……『下僕』なの

主人公木藤拓斗と、ヒロイン剣崎遥の出会いを軸として、導入部としての1章が終了した本作『剣崎遥は盾を所望する』。気のいい友人たちと危ない先生、イッてる母親(笑)に囲まれたお人好しの主人公とデレる彼女といった人物相関図は、ある意味ライトノベル的とでも言いましょうか。表面的には、わいわいがやがやと賑やかな作品になっています。

タイトルだけ見れば所望するほうの遥が上位で、盾になる拓斗が、それに付き従う立場のような印象を受けますが、“一方的な主従関係は良くない”ということで、両者の権利は至極平等だとか。戦闘中は剣たる遥が主人、プライベートでは拓斗が上位と、男女“所望”機会均等法にのっとった公平ぶりは、ジェンダーフリーが叫ばれる今の時代になんとも則したもの。

スリーサイズが上から84・56・80というスタイル抜群の美少女を“下僕”にできる! なんとも羨ましい展開は男の夢と欲望を加速させてくれます。作者の狼狽騒氏いわく“拓斗はヘタレ”とのことですが、いやいや、ンなこたぁねえだろう。きっとこれから、あんなラブラブ展開やこんなエロエロ展開が待ち構えているに違いない、と今後に期待させていただきますよ狼狽さん!

本作に登場する怪物は“魂鬼”。これは怨念や後悔を抱えたまま死んだ人間の魂が具現化したもの。それと戦う遥ら“スピリ”の宿命を描いた『人間の定義』の章は必見の出来になっています。光に対する闇(職業的な達成感と、それに付随する可能性がある闇の部分)、記憶と忘却、母と子……シビアな展開の末に何処か光明もさすラストは本作品が単なる明朗明快愉快なだけでなく、心理描写に重きをおいた叙情的側面を持つことの証明と思われます。わいわいがやがやと賑やかなだけではなかった!

伏線らしきものがちらほら見られますが、狼狽氏の職人芸で徐々に回収要素もパワーアップしてゆくに違いない『剣盾』。今後の展開に乞うご期待!

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