不条理の糸を断ち切る首狩天使の大鎌

まず重厚な世界観に圧倒されました。町や村、人々の生活、社会構造などが詳細に描写されていて、本当にその土地の空気を吸っているかのようです。散りばめられた謎が解き明かされて新たな世界が見えてくる仕掛けに、ぐいぐい引き込まれていきます。
登場するのは、生きるのに必死で悪意のない若者達。運命のいたずらか、社会が内包する不条理ゆえか、彼らは罪に問われることになってしまう。そして彼らの前に現れる、「人の道を外れた罪人の首を狩る」のが役目のアスコラク。
なぜ被害者とも取れる者たちの首を狩るのか、それはぜひ読むことで感じ取って欲しいです。決して一面では捉えられない世界の、人間の、天使の、多くの声が立ち上がってきて物語を紡ぎ、読む人をさまざまな感情で翻弄し、圧倒してくれるはずです。

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