エピローグ

 次にぼくが目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。


 ぼくは燃え盛る廃屋から奇跡的に助けられたらしい。なんでもまだ近くにいたシュウくんたちが、火事に気付いて慌てて助けを呼んだのだとか。


 病院で目を覚ましたぼくに、両親は泣いて謝っていた。もっとぼくに向き合っていればこんなことにはならなかったとしきりに言っていた。そんなことはないとぼくは思うのだけれど。


 退院したぼくは、また学校に通うことになった。シュウくんたちはあまりぼくをいじめなくなっていた。多分、火事の一件が堪えたのだと思う。


 今でも中学生のお姉さんたちが通るたびに、目で追ってしまう。だけどそこにシノさんはいない。あんなにうつくしいひとはどこにもいない。



 裏山が崩されていく。火事で焼けた廃屋が跡形もなくなっていく。

 あのとき出会ったうつくしいひとのことを、ぼくだけは知っている。



(了)

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蝋燭心中 黄鱗きいろ @cradleofdragon

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