情緒に落ちてゆく。

ふんだんに盛り込まれた情緒的な文章、それで紡がれてゆく薄暗い青春に落ちていくような、そんなイメージを抱いた作品です。

この作品に光などどこにもないのかもしれません。
あるのは読者を圧倒的な筆力で引きずっていく暗闇。
一人の少女と一人の少年が決めた、一つの方向性がどこに向かうかまだ、わかりません。
それでも作品に満ちた仄暗さは最後の答えを示しているような気もして、心地よい浮遊感すら漂わせています。

どこにでもあるようなことを繰り返す、どこにでもいる少女が抱く絶望に近い諦めは、得てして若者にありがちな誤りと思われがちですが、果たしてそうでしょうか。
そのアンチテーゼとなる少年の言葉には、深い洞察が秘められています。

キャッチコピーにある通り、そんなもので思いついた行動に拍車をかけていく展開と少年の出会い。
ゆっくり、時間をかけて、夜に読んでほしい名作の一つです。

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