線香花火の球ってさ、落ちるとき「じゅっ」って言うだろう?え、言わないか? よーく耳を澄ませてごらん、ちゃんとそういう音がしてる。それと同じ音が聞こえるんだよ。海に夕日が沈むとき。じゅっ。その音がするときの夕日は決まって同じ色なんだ。線香花火の球の色。熟れ過ぎた柿のように少しだけ透明感があってね。おや、もうこんな時間かい。
ふと幼い頃の自分を思い返しながら、黄昏の中で本をゆったりと読む老人の姿が穏やかな筆致で描かれた作品だと思いました。本を読むことが昔よりゆっくりになったという彼の姿からは、本への静かなる愛と、人が沈みゆく太陽のようにゆったりと年を刻むという事実が込められているような気がします。 関係ないですが、タグの眼球疲労に少しだけ笑いました……。
短な話に、すーっと言葉が流れる。読みながら、一緒に「吸って 吐いて」をしました。一文読んで、吸う。一文読んで、吐く。おじいちゃんが本を読む話。ただ、それだけで色が飛び出て、空を眺めたい気持ちになる。
陽の沈む様子を色の変化で現わしている情景の描写がとても印象的です。 そして最後の一行を読み終えたとき、書かれてもいないのに夜の静けさを感じる作品でした。
ああ、こんな風に年を重ねて、自然光で本を読み、読めなくなるほど日が傾いたら目を閉じる。そんな人生の黄昏時はきっと幸せでしょう。
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