その2 月経事情


 初夜の話をしたからついでね、ついで。

 サニタリーベルトのときにちょっとだけ触れましたけど、女性の月経事情。


 ずっと話題にしてきたヴィクトリア朝っていうのは、よく異世界ファンタジーで『中世』って表現されている世界観に反映されている時代みたいですが、正確には近代初期っていう時代にあたりますよね。

 現代でも、そのヴィクトリア朝でもそうですが、基本的に女性の月経――生理の話はタブー視されているというか、おおっぴらに話さないものです。女性同士でもね。

 女子高育ちの私は、まあ、そのあたりはちょっとゆるい感じだったんですけど、それでもそんなにおおっぴらには語り合わないものです。

 そして、その中世時代(四~十五世紀頃)では、更にタブー視されていたらしいです。


 そもそも女性だけに起こるこの現象を、人々は『身体の中に溜まった悪い血を排出している』と考えていて、それには毒が含まれていると考えられていたとか。

 生理中に性行為をするとちんこが腐るとか、そんな毒素を体内に持っている女性の所為でワインが腐るとか、そういうことが考えられていたらしいです。

 わ~…ヨーロッパ人の発想って、恐~~い……。


 因みに日本は平安から鎌倉時代のことで、その頃はどうしていたんでしょうか?

 宮中にお勤めだった女官(紫式部とか清少納言とか想像して頂ければ)などは、一週間ほど宿下がりをしていたそうです。

 帝の御所で住み込みで働いていますからね。実家に戻って、閉じ込められ、生理期間が終わったらピッカピカに全身綺麗に清めてから職場復帰していたそうで。

 つまりこちらでも、月経は『穢れ』として扱われていたんですね。



 で、欧州に話題を戻しますけれど、

 年頃の女性はそうして毎月悪い血を排出するものだと思われていて、生理が来ない人は無理矢理血を出させる――つまり、瀉血などをさせたりもしていたそうです。そうしないと毒が身体に留まったままだと考えられていたんですね。

 医療技術がそんなに発達してもいなかった時代にそんなことして、大丈夫だったんですかね?

 迷信とかに凝り固まっていたから、神様が男よりも劣った女をそういう風に作ったんだ、としか思っていなかったのかも知れないですけれど。


 医療技術や知識が発達していなかった故に、月経が受胎に必要な身体のメカニズムという認識はほぼなく、赤ん坊は「なんかたまに女性の腹の中に出来る」ものだと思われていたとかなんとか。

 生物の本能なのか、男女が揃えば、子孫を残す為に性行為をすることは自然なことだったのでしょうが、それが子供を宿す為の行為だという認識はなかったということか。


 うーん。そんな認識だった中で、誰が一番初めに性行為=子孫を残すということに気づいたんだろう?

 なにかわかったら追加報告に来ますね。



 中世よりずっと医術や知識が進歩したヴィクトリア朝でも、生理がおおっぴらに語れない事象であることは変わりなく。

 ヴィクトリア朝は、統治者である女王が潔癖な面があったのか、それ以前の時代よりも貞淑であることが求められていた時代。特に貴族階級のお嬢様達は、結婚するまで性的なことは殆ど教えられずに育ちます。

 結婚する前に少女達はもちろん初潮を迎えますが、これから毎月そういうことが起こるようになるが、あまり人に知られてはいけない恥ずかしいことであると教えられ、彼女達はとにかく性に関することを忌避しながらお嫁に行くのです。

 逆に男性達は、学校の先輩達とかから女遊びなどを教えられ、性的な知識はそれなりにしっかり叩き込まれていて、筆下ろし脱・童貞も済ませていたようで。

 この差って、なかなかすごい溝になると思うんですけどね。




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スカートの中の秘密~役立つかわからない無駄知識~ 都月きく音 @kikumine

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