人里離れた村の淫靡な風習

「古代に造られた地下神殿」とか「古流剣術を密かに伝える剣道場」みたいに男にとってどうにもロマンを掻き立てる舞台や状況というものがあります。

この小説もその一つの形と言えましょう。
滅多によそ者が来ないさびれたような山奥の村。
実際昔はそういった場所に旅人が訪れると新しい血を取り入れるために
若い女が夜伽に寝所に忍んで来る、なんて話もありますし、
島全体が遊郭だという村の話も聞いたことがあります。

そんな男の夢を形にしたような世界ですが、
山村には同時に陰鬱で閉鎖的なイメージも付きまとうものです。

この物語の主人公たちも「信じられないくらい良い思い」をするのですが
「うまい話には裏がある」という現実も忍び寄ってくるのです。

筆者はそういう読者の期待と不安を見事に裏切らずに
描ききっています。

結末が楽しみです。

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