これは今までの異世界ファンタジーとは一線を画す、ヘンテコだらけのファンタジー作品だ。そして、二人の少女の熱い友情物語でもある。さらに、主人公の出自を探る、バリバリの伏線ものだ。終盤になって、胸が熱くなって、目頭を押さえる自分に、自分自身が驚いていた。
凶暴なリンゴ。サラダになるコウモリ。カボチャは宙に浮いて実る。羊は木から生まれ、凶暴な森の主は走る。そんな森に、記憶をなくした主人公が転がる。その主人公を、魔女のニコが拾うことで、物語は始まる。この世界には魔女、魔法少女、魔導士、人間の区別があり、魔女や魔法少女、魔導士は、それぞれ数字や文字、記号の鍵を持つ。ニコは文字通り「Ⅱ」の鍵を持ち、それに関する魔法が使える。しかし主人公が持っていた鍵は「Ⅹ」。様々な憶測を呼ぶ鍵だった。そこでニコは主人公をペケと呼び、二人はペケの記憶と出自を巡る旅に出る。
様々なヘンテコな世界。迫りくる敵。成長する二人。深まる謎。
互いを補い合いながら、「Ⅰ」だった少女は「Ⅱ」となり、「失敗のⅩ」は「未知の可能性のⅩ」となる。残酷な真実も、強靭な敵も、二人なら乗り越えられる。だって、私たちは「Ⅰ人」じゃないから!
是非、大切な人とこの物語を共有してほしい。
二人の友情に、忘れかけていた何かを見つけられるはずだ。
是非、是非、ご一読ください。
個人的には忍殺以来の衝撃です、コレ。
例えるならニンジャスレイヤーとメイドインアビスとハリーポッターを足して10を掛けたような怪作。
本作の最大の魅力は大量に出てくるトンチキ世界観。方向音痴の太陽、畑で採れた懐中時計、羊が実る木、自生する煙突、ヤマタノパンダ、野生のイカダといったトンチキメルヘン描写が当然のようにどんどん出てきて読者の脳をぶっ叩き続け、しかも出オチに留まらず奥深い世界観を構築していく。
それどころかトータルで見るとなぜか王道冒険ファンタジーでしかなく、ワクワクが止まらないのが卑怯。
序盤こそ荒削りでスロースターターな印象を受けるが2章あたりから加速度的に面白くなっていくので、とりあえず2章ラストまで読んでみてほしいところ。
そして戦闘描写や伏線回収も一級品。モノをラクガキに変える魔法がちょっとした応用で超強力な攻撃手段になったりと、応用系能力バトルとしても完成度が高い。
総評としては世界観は商業作品含めてトップクラス、ストーリーは良くも悪くも児童文学的王道、戦闘や伏線回収は期待以上。
いいもの読ませていただきました。
何も無いってのはとても怖いんです。だから最初は、見るもの全てを振り払うんです。だって何もかもが初めてだから、戸惑うんです。
そして独りぼっちってのは凄く寂しいんです。だから求めてしまうんです。だって誰かが隣にいてくれるのは、凄く暖かいから。
この物語は、そんな何も無い魔法使いと、寂しがり屋な独りぼっちの魔法使いが出会い、不思議な世界で不思議に戦い、不思議な人々と太陽に照らされ、真っ直ぐと成長していく物語。
作者の豊かな表現力で目の前に映し出される景色の数々は、その彩に圧倒されること間違いなしです。
のらりくらりとまどろむ猫っぽい太陽や月。空飛ぶ島に虹の橋。羊が実る木や苗から育つニワトリモドキ。
ああ、もっともっと紹介したいけれど、あとは読んでからのお楽しみにです。
どうぞ皆様、この濃厚で純粋なファンタジーを、一緒に共有しましょう。
最初は「変わった世界観だなー」くらいの気持ちで読んでいたのですが、読み進めるほどにぐいぐい惹きこまれちゃいました。
まず世界観が面白い。不意打ちのように紛れ込むトンチキ描写で笑ってしまう。しかも作り込まれてる。魔女達のキャラもいい。そしてキャラの積み重ねときれいな設定回収でどんどん盛り上がるんだから面白いに決まってる。
あ、皆さんのレビュー見てると作り込まれた世界観を推す声が多いみたいですが、私的には何よりバトルシーンを推したいところ。だって魔法の応用ラッシュすぎて面白いんだもの!
そもそも冒険モノなのに、主人公の魔法は殴るよりも弱い衝撃波。相棒の魔法はモノをラクガキに変える魔法などなど。そんな弱っちい魔法を駆使して格上の敵に食らいつくんだから燃えないわけがない。とにかく戦闘シーンを始めいろいろと見ものです!
面白すぎて夜更かししてしまいました。
それにしても作者の頭の中どうなってるんだろう。
太陽が方向音痴なせいで空をふらふらさまよったり、滝が空へと昇ったり、蛇口が自生していたり、懐中時計が畑で採れたり。この小説はそんなメルヘンな世界で魔女達が冒険する物語です。しかも、これらの変な描写が当然のように地の文に紛れ込むからクラクラしてしまいます。
これだけ聞くと一見出落ちのゲテモノのように見えますが、実は超王道の冒険ファンタジー。弱い魔法を工夫で補い、勇気と友情で強大な敵に立ち向かいながら成長していく二人の少女が可愛くて格好良くて最高です。
ぜひ皆さんもご賞味ください。クオリティは保証します。
何もかもがヘンテコな異界を舞台に、記憶を失った少女・ペケと未熟な魔女・ニコのコンビが魔法を駆使して冒険をする物語です。
オススメしたいポイントがたくさんある作品です。
読みごたえは抜群でした!
一回行ったら帰ってこれない世界がここにあります。
まず、ペケとニコの友情がアツい!
記憶を失った「失敗作」の少女・ペケ、最初のうちは自分が何もできないと不安にかられるばかりでなかなか前に進めませんでしたが、ニコとのやり取りを通じてどんどん強くたくましくなっていきます。
一方のニコは、太陽のように明るく天真爛漫な少女で、ペケのために頑張る彼女は健気でいじらしく、また魔女であることの誇り(頻繁に口にする魔女ことわざ? 魔女あるある??が可愛いです)がとても頼もしい! 彼女もまた本当は不安を抱えていることも分かってきますが、今度はそんなニコをペケが救います。
二人はお互いを励まし合い、引っ張り合って、どんどん先へと進みます。
前半には危なっかしくて読んでいてはらはらするシーンもありましたが、途中から、この二人なら何とかなる! 絶対記憶も取り戻せるし、ラヴィにだって勝てる!と信じられるようになりました。
とにかく、二人だったら頑張れる!
次にオススメしたいのがメルヘンで可愛らしい世界観。
物理法則も生物の法則も無視した不思議な世界で、何もかもが魔法のようですが、説明されるとなんとなく「まあそういうものなのかな」と思えてしまいます。
それほど作り込まれているように感じます。
森は凶暴だし、月は気まぐれだし、海と空が入れ替わることもあるし、イルカが郵便物を届けてくれることもあるかもしれない。
ヘンテコだけど、この世界では当たり前のことで、「今度は何が出るんだろう!?」とドキドキわくわくしつつもなんとなく受け入れて違和感なく話を読み進めることができます。
私が好きなのは乾燥クラゲです。
そして、作中に登場する魔法使いたちの魔法の多様さ!
魔女、魔法少女、魔導士、と三種類の魔法使いが登場するのですが、どれもきちんと魔法の理論が組み上がっていて、読んでいて「へー面白い!」となるばかりでした。
ペケとニコの魔法は特にすごいです。
ひとつひとつの魔法は地味なんですけど、二人は成長していくにつれてそれぞれ自分の魔法の組み合わせ技を開発していきます。賢い!
どんなに地味な魔法でも、使い方次第では強大な敵に立ち向かえる。
この世界において魔法は心の力です。
二人はたびたび新しい魔法を獲得します。
心の成長とともに魔法も成長していく――胸が熱くなる展開です。
最後ペケの正体が判明した時はペケと一緒に動揺してしまいましたが、でも、大丈夫。ペケが何であってもニコはきっと一緒にいてくれる。
信じていられる。
信じる心がある限り少女たちは負けないのです。
二人はきっとずっと一緒に冒険の旅を続けられる!
さがしものが見つかって、本当によかったです。
これを無料で読んでよいものか。ふわふわ浮くカボチャ、底なしの海に引きずり込まれないように浮いている島々、下から上に気まぐれに流れる川。三つの異界はどれもこれもヘンテコで、デタラメで、メルヘンで溢れている。
世界観、キャラクター、ストーリー、文章、どれをとっても素晴らしい。三つの異界の特徴もよく現れているし、鍵のモチーフに合わせたキャラ設定や魔法が考え尽くされている。主人公ら二人の奮闘や成長にも好感が持てる。
最後はそこ伏線だったのかよというところまできっちり回収して、ぎゅっと結んで最高のラストで終わる。
とにかく一番いいのは考え抜かれた世界観。これは少し読むだけでわかるから、ぜひ読み始めてもらいたい。児童文学だけれど、大人でも超楽しめる。