このヘンテコな異世界の旅で、まさかこんなに胸が熱くなるとは……!

 これは今までの異世界ファンタジーとは一線を画す、ヘンテコだらけのファンタジー作品だ。そして、二人の少女の熱い友情物語でもある。さらに、主人公の出自を探る、バリバリの伏線ものだ。終盤になって、胸が熱くなって、目頭を押さえる自分に、自分自身が驚いていた。
 凶暴なリンゴ。サラダになるコウモリ。カボチャは宙に浮いて実る。羊は木から生まれ、凶暴な森の主は走る。そんな森に、記憶をなくした主人公が転がる。その主人公を、魔女のニコが拾うことで、物語は始まる。この世界には魔女、魔法少女、魔導士、人間の区別があり、魔女や魔法少女、魔導士は、それぞれ数字や文字、記号の鍵を持つ。ニコは文字通り「Ⅱ」の鍵を持ち、それに関する魔法が使える。しかし主人公が持っていた鍵は「Ⅹ」。様々な憶測を呼ぶ鍵だった。そこでニコは主人公をペケと呼び、二人はペケの記憶と出自を巡る旅に出る。
 様々なヘンテコな世界。迫りくる敵。成長する二人。深まる謎。
 互いを補い合いながら、「Ⅰ」だった少女は「Ⅱ」となり、「失敗のⅩ」は「未知の可能性のⅩ」となる。残酷な真実も、強靭な敵も、二人なら乗り越えられる。だって、私たちは「Ⅰ人」じゃないから!

 是非、大切な人とこの物語を共有してほしい。
 二人の友情に、忘れかけていた何かを見つけられるはずだ。

 是非、是非、ご一読ください。

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