同じ時を過ごせなくても、せめて同じ夢を見ていたい。

フクロウが起きると世界は夜になる。

ニワトリが起きると世界は朝になる。

お互いが微睡んで朝と夜は交代する。

神話にも似た設定と、柔らかな文体によるストーリーテリングはまさしく「童話」。私は絵本作家の安野光雅氏が好きで、彼の絵本をよく読んでいるけど、自然と彼の画風で物語が想像された。

同じ刻を同じ場所で過ごしている筈なのに、起きてみるといつも相手は眠っていて、どうやっても起こせないから起きている時はいつもひとり。相手の寝顔を見て今日の眠りに就けるのに、一度だって言葉を交わした事は無い。もしかすると、彼らが同時に起きていられても言葉は通じないかもしれない、とそんな老婆心もある。

でも、心は言葉ではないから、そこにいるだけで通じ合える。

だから今日の夜と明日の朝は、せめて夜と朝を眠気まなこで過ごす誰かに思いを巡らせていたい。たった今目覚めた人には「おはよう」と、たった今目を閉じた人に「おやすみ」と呟く。

相手がわからなくともそういう存在は必ずいて、そんな存在との心の通じ合い方があると、この作品は思わせてくれる。

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