第7話 打ち合わせ

 小川の村を原付で走行するとすぐに同じ松原市内の一津屋という村に入るので小川での滞在時間は全体的に見ても10分足らずである。だけど僕は思い出を振り返るのには十分な時間だと思っている。


 「少し満足したなあ。」


 そして恵我ノ荘駅の踏切を通ると阿倍野方面を向いた。その先に見えるのは高架の下をくぐる線路だけだが僕はホームを見るとあの日・・・出発する光景が映ったように見えた。


 「あの日に戻りたいなあ。」


 そう呟くも25年前の自分にもう会うことは出来ない。帰り道に恵我之荘幼稚園への通園路を原付で走行してみると昔と違い住宅地などが開発されているのが分かる。また昔は幼稚園で道は行き止まりだったがいつの間にか幼稚園の門の先に小さな坂と階段が出来ているのだ。その先を進むと松原市内と羽曳野市内を結ぶ道に出るのだ。


 「昔は幼稚園から先に道はなかった。変わったなあ・・・!」


 昔と違う光景に思いを馳せて僕は店に戻ると新山さんと入口さんがいた。出発後に新聞の入れ忘れの連絡はなかったらしくこれから3人でちょっとしたトークショーである。


 「昨日、パチンコ行ってきてん!」


 「え!?財布寒いのに!?」


 「厳しいんちゃうの?」


 今日はパチンコトークらしく新山さんは昨日パチンコに行ったそうでしかも敗北したそうな。しかし入口さんや僕から突っ込まれても新山さんは堂々としていたのだ。


 「ついつい熱くなるねんなあ!そういや入口さんは行ったんか?」


 「いや、アタイ・・・は行ってへんで!昨日は寝てた!」


 時々入口さんは自分のことを『アタイ』と言うが「アタイって・・・」という突っ込みは無しとして25年前の記憶が忘れられない反面、こうして雑談や話が出来る仲間がいるから僕は過去に囚われることがないのだ。それは自分にとって幸いなことだ。ただし僕は宝くじはするけどパチンコをしないのは二人とも知っているけどね(笑)。すると僕のラインに連絡が入っていたので確認すると作家仲間からであった。


 〈後日お会いしませんか?作品作りの打ち合わせをしましょう。〉


 実はこの作家仲間(女性)と僕は最近関わりがあり、彼女の計画した作家グループの合同作品作りに僕が参加することになったのだ。当然これを見て僕はすぐに返信した。


 〈では後日大阪市内で。〉


 作品作りの打ち合わせの計画段階である。僕は嬉しくなって即参加を決意したのだ。この打ち合わせで僕はある決意を抱いたのであった。勿論25年前の物語と強い関わりのある作品にしようという決意だ。

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