第4話 小川という地名

 翌日、僕は職場で本のイラストを眺めながら小説のネタを考えているとある電話が掛かってきた。僕は着信番号を確認すると松原まつばら方面であった。


 {もしもし、新聞入ってませんよ!}


 「申し訳ございません!どちらのお住まいの方でしょうか?」


 {松原まつばら市の小川おがわです!}


 「(小川・・・・・!?)」


 入れ忘れの電話が掛かってきたのは松原市の『小川』という地域だ。店から小川までは大体15~20分という遠い場所にあたるが僕は喜んでいくことにした。


 「よし、行きます!」


 早速元気よく入れ忘れの新聞を届けに行こうとする僕だが席に座っていた新山さんは僕のことを心配してか自分が行くと言う。


 「遠いし俺はそっちの方面は土地勘が・・・あるから行くわ。」


 「新山さん、眠たそうやん。僕行きますわ!」


 するといつもより疲労気味だった新山さんは僕が行くのをOKしてくれたのだ。


 「すまんなあ。頼むわ!」


 「OKっす!」


 そして僕は『小川』へと向かうのだがなぜ“小川”に敏感になっていたのか・・・実はこれも『夏の思い出』と関わりがあるからだ。それどころか思い出・・・の中でも一番大きな思い出だからである。僕は急いでというかはしゃいでというかテンションを上げてバイクを走らせていた。




 ー恵我ノ荘駅前商店街ー


 僕は小川へと向かう途中に商店街という名のついた道を走る。店が並んでいるが車は通れるし、ビルや歯科、料理店などもある。


 「(あ!駅前の踏切や!)」


 僕の目の前に現れたのは踏切であった。その踏切は25年前に比べて少し変わっていたが思い出を振り返るのに最適な場所の一つである。僕は踏切を渡り、その際に右側(吉野よしの方面)と左側(阿倍野あべの方面で駅舎が見える)を見つめる。


 「(右を見れば奈良なら・・・左を見れば和歌山わかやまへ行くあの日の・・・)」


 なぜ阿倍野方面を向いて和歌山の思い出が出てくるのか?それは恵我ノ荘駅での記憶にあった。




 ー25年前・夏ー


 この日の恵我ノ荘駅の2番線ホーム(阿倍野方面)にはたくさんのお出掛けの準備をした子供達と大人が数人いた。その子供達の中に【】はいたのだ。僕はホームから阿倍野方面を向くと高架の下の短いトンネルが見えたので駅からどれくらいの距離かなと眺めていると電車が到着したので僕も皆と一緒に乗車する。


 「みんな!乗るよ~!」


 『は~い!』


 恵我ノ荘駅には各停しか止まらないので隣の河内かわち松原まつばら駅で準急阿倍野橋あべのばし行きに乗り換える。松原駅の4番線ホームから3番線ホームへ移動して僕は準急を待つ・・・




 ーー


 僕はその記憶を思い出すとその後の思い出を脳内で少し再生させるとそのまま小川へと向かう。実は小川へと行くには松原市の職場から恵我之荘を経由するコースがあり、そのために僕は喜んで小川へと向かったのだ。そして松原市内に入り、途中で右折して道に沿って進むと橋が見えてきた。そう、ここが【松原市小川】なのだ。


 「(おぉ!小川に着いたぞー!)」


 僕は小川へ到着したのが嬉しくなった。勿論25年前にこの・・小川とは何の縁もない。だが小川という地名・・はある思い出を連想させてくれるのだ!

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