第2話 25年前の記憶

 僕が訪れたのは羽曳野市南恵我之荘みなみえがのしょうという場所である。この場所は僕が幼稚園時代に過ごした場所で懐かしいのだ。ただ新聞を届けるのが優先なのでまずは届けてからゆっくり回ろうと思ったという。


 届け先に新聞を届けてからさあ観光(?)だ。まずは幼稚園の通学路をうろうろするのだ。僕の育った児童養護施設の近くに今は閉店している店があり、その横に小さな道があるがこれが通学路なのだ。


 「ああ、懐かしいけどあれ・・・?」


 僕はあることに気がついた。それは幼稚園時代に道の途中に小便用だけの便所があったがそれはいつの間にか無くなっていたからだ。


 「ここの跡に新築を建てたのかな・・・?」


 少し寂しい気持ちはあったが先へ進むと奥に大きな森が見える。そう、これは古墳こふんである。


 「(昔古墳の近くにいた男の子が僕に手を振って古墳の中へと向かっていったような・・・・・・)」


 幼稚園に通う途中にある男の子が古墳の方へ向かうのを見た記憶が蘇る。ちなみにその古墳の入り口らしき場所へ行くと立入禁止の看板が貼られていた。


 「・・・」


 僕は看板を感慨深く眺めていたが幼稚園への道を通り過ぎたのでUターンして通園コースに入る。昔とあまり変わらない道であったが畑の部分が減って土地が出来ていたり幼稚園の横に小さな坂と階段があり、隣の松原市を繋ぐ道へ合流するのだ。


 「(昔は幼稚園の横の坂と階段こんなものはなかった。畑が広がっていたけど変わったものだ。)」


 昔とは違う恵我之荘の風景に寂しそうな顔をしつつも僕は昔に育ったその地への愛着心が日に日に強くなっていることを実感したのである。


 「さて、店に戻ろう。」


 本来なら近鉄南大阪線の恵我ノ荘えがのしょう駅や恵我之荘商店街を見に行きたいのだがそこまで行くことはなかったので別の機会に行くことにしたのである。なお地名ではあるが踏切の手前は【羽曳野市恵我之荘】で踏切の先は【羽曳野市恵我之荘】なのだ。


 店に戻ると新山にいやまさんと入口いりぐちさんという二人の同僚が出迎えてくれた。


 「お帰り!」


 「お疲れ!」


 「どうも!!」


 温かい出迎えを受けて僕はちょっぴり幸せな気持ちであった。また明日も恵我之荘に行けるかな・・・その気持ちが強かった僕は行ける機会を待つのであった。


 翌日、店番をしていると電話がかかってきたので対応した僕は少し驚いたのである。理由は・・・


 「新聞が入っていませんでしたか!?今からお届けに伺いますが住所は・・・恵我之荘でしょうか!?申し訳ございません!!すぐお届けに参ります!」


 なんと行きたかった恵我之荘えがのしょうの地域からの電話だったのだ。駅から商店街まで見ることが出来る!


 「新山さん、僕が行きます!」


 気持ちをワクワクさせた僕は新山さんに新聞を届けに行くことを伝えたのであった。

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