都市伝説というものは嘘や作り話、または全く関係の無い話に尾鰭がついて広まって行くものですが、このお話の場合はそれでは到底説明のつかない事です。
虚構を信じ込む人があまりにも増えてしまったが為に、それが現実のものになってしまったというケース。
例えば鶴屋南北の『東海道四谷怪談』などが、その一例と言えるでしょう。
あのお話のモデルとなったお岩さん夫婦は、実際には仲の良い夫婦であんなおどろおどろしいエピソードなど無かったと言います。
しかしながら『東海道四谷怪談』が人気を博し、それがさも実話であったかのように広まってしまった事で、それに纏わる実際の怪奇現象まで発生するようになってしまった。
このお話は、その類いであるのかもしれません。
人の死や不吉な曰くなどといった明確な原因が無いだけに、余計に怖いですね。
うわさ・都市伝説は、ひと昔前ならば、口頭伝承のみだった。口伝えは、新聞や雑誌など紙媒体や、テレビに取り上げられることがなければ、拡散もされなかったし、残ることもなかった。
いまは違う。発信の段階から、発信者が文字で残せるし、拡散もできる。
ツイッターにつぶやいて衆目を集め、他者の「ワオ」を信じる念を利用して、降霊術を行う。
おもしろい試みだと思う。怪談としてだけではなく、実験として、興味深い。
さくらが数人いて、写真に姿が見えると騒げば、念は増大し、もっと濃密な気配が竹藪に生まれたのではないか(もっと怖い経験になったのではないか)と考えるにつけ、都市伝説好きとして、「惜しい」という気持ちが、しかしながら、少々残る。
日々SNSを利用していますが、身近起こりそうな……というより、もう起こっていてもおかしくないという、リアルな恐怖を覚えました。
『ワオ』とはまた別物だと思うのですが、私も幼い頃似たようなものについて祖母に聞いた覚えがあります。
同じ濁点二文字で、ドドだったかギギだったかボボだったか……よく思い出せませんが、早く寝ないとそれが来ると脅されると慌てて布団に潜り込んだものです。
また私が何度か見たソレは、作中で描写されている『ワオ』とは姿形が異なっておりました。
私達の想像力は『何か』を呼ぶだけでなく、それに力を与え、より強大で恐ろしいものに作り上げてしまうのかもしれません。
うまくまとまらず、取り留めのないレビューになってしまい、失礼しました。