ぴりりまばゆし 俳諧の味
- ★★★ Excellent!!!
第一句「春の雨湯のごとたぎちけぶりけり」を開いた瞬間、これは、と電流が走りました。
――これは、文句なしにうつくしい。求めていた日本語だ。
というわけで、数日かけて全句拝見致しました(2018年11月16日時点)。
芯の通った、さびさびとした日本語。それでいて時にひょうげたユーモアやまろやかな愛らしさもあり、俳諧のさまざまな妙味を、さまざまな角度から万華鏡のように楽しませて頂きました。
また、参考句や典拠がたいへん多岐に渡っていらっしゃることに敬服。私が漢詩を囓っていた経験があるので、とくにそのエピソードが出てきたときは嬉しくなりました。
以下、個人的に好きだなあと思った句を挙げさせて頂きます。
春の雨湯のごとたぎちけぶりけり
朧月或緑の龍ひそむ
逝春をしづかにわらふ人は誰
腥きもの埋もれけり雪の中
さびしかろ雪降る池に舞ひおりて
目眩く夏は穂麦の朱きより
ここに来て人恋しさや三十三才
春の山古事記の民も遊ぶらん
振向いて見返る猫や月の下
もみづるや饂飩に七味唐辛子
猫はさぞ後の世かけてひなたぼこ
あなかしこ蚯蚓の跡を御目汚し
逝春や岸を離るゝ鴨の声
毒親の縁断ちし身や鰒汁
呼合ふや霜々の聲星の聲
春めくや馥郁として帋の屑
青空や水田にゝほふ桃の花
梅が散り桜が散るや山笑ふ
春深し仔犬隠るゝ草の陰
若葉よりしたゝる月の雫かな
あぢさゐやおとなの猫を隠すほど
日傘女盛りを逃さじと
夏痩の肋浮き出る痛さかな
地には花天には星の秋来る
月かけて香たちのぼる夜ふけかな
星空をささへてたてる枯木かな
夜の星枯木にはなを咲かせけり
梅活けて唐猫かはん冬ごもり