ぴりりまばゆし 俳諧の味

 第一句「春の雨湯のごとたぎちけぶりけり」を開いた瞬間、これは、と電流が走りました。
――これは、文句なしにうつくしい。求めていた日本語だ。
 というわけで、数日かけて全句拝見致しました(2018年11月16日時点)。
 芯の通った、さびさびとした日本語。それでいて時にひょうげたユーモアやまろやかな愛らしさもあり、俳諧のさまざまな妙味を、さまざまな角度から万華鏡のように楽しませて頂きました。
 また、参考句や典拠がたいへん多岐に渡っていらっしゃることに敬服。私が漢詩を囓っていた経験があるので、とくにそのエピソードが出てきたときは嬉しくなりました。
 以下、個人的に好きだなあと思った句を挙げさせて頂きます。

春の雨湯のごとたぎちけぶりけり

朧月或緑の龍ひそむ

逝春をしづかにわらふ人は誰

腥きもの埋もれけり雪の中

さびしかろ雪降る池に舞ひおりて

目眩く夏は穂麦の朱きより

ここに来て人恋しさや三十三才

春の山古事記の民も遊ぶらん

振向いて見返る猫や月の下

もみづるや饂飩に七味唐辛子

猫はさぞ後の世かけてひなたぼこ

あなかしこ蚯蚓の跡を御目汚し

逝春や岸を離るゝ鴨の声

毒親の縁断ちし身や鰒汁

呼合ふや霜々の聲星の聲

春めくや馥郁として帋の屑

青空や水田にゝほふ桃の花

梅が散り桜が散るや山笑ふ

春深し仔犬隠るゝ草の陰

若葉よりしたゝる月の雫かな

あぢさゐやおとなの猫を隠すほど

日傘女盛りを逃さじと

夏痩の肋浮き出る痛さかな

地には花天には星の秋来る

月かけて香たちのぼる夜ふけかな

星空をささへてたてる枯木かな

夜の星枯木にはなを咲かせけり

梅活けて唐猫かはん冬ごもり

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