一つの視線。見つめる視線。見守る視線。

『桜月夜』シリーズの第3弾。
視点を変えて、同じ時間を過ごした彼らの時間をキリトル。
主人公二人だけじゃなく、三人目の要君が登場です。

思うんだよね。一人の見ている景色には限界があるって。
見ているようで、知らないことがある。
だから、他の人と共有することで見えてくる、多角的世界。

樹と咲、あの二人がこうしているのは、要がいたからだね。
偶然とか、必然を超えて、あたたかいまなざしが背中を押す。
要は自分のことより、人のことをきちんと見守れる人。
そういう人は優しくて、自分があと回しになってしまうことが多い。
だから、今度は君の番だよ。すきな人を写してごらん。

ラストシーン、桜散る夜、満月のあかり。
空気がいつもと違う恋を連れてくる夜。
三つのサーチライトが桜月夜に合わさり、浮かび上がらせた恋。
双方向に加えて三方向、立体的だから三角錐かな。
透明な光の線が引かれて、この夜はずっと大切にされていく。

こういう連作短編集もいいなぁって、こちら読者は酔いどれています。

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