読み終わってやりきれないという気持ちになりました。
このお話ではヒロインにとっての希望と絶望への解釈が語られ、最終盤にそれに対する主人公の見解が語られます。僕はそのふたつの意見のどちらともに言い分は理解できはしたものの、結末のことを思うとやっぱりやりきれないなあと思ってしまいます。
「価値観は人それぞれ」といえば耳障りはよく、それ自体にはなんの反論もありませんが、ケースによっては、特に生死に関して価値観の配慮というのは無遠慮に行われていいものではないかもしれないと考えたりします。
ではどういう言葉をかければああならずに済んだのかといえば、その答えは誰にも分りません。なぜなら当人の価値観ですので死が怖くなくなってしまい、むしろそれが希望になってしまったのなら、どんな言葉さえも意味をもたないでしょうから。
例えばそれは自分にはない価値観をもった人と出会った際の接し方を考えるようなものでしょうか。僕は自死を望む人物の価値観をうまくは理解できません。なぜなら自死をすべきではないと思っているからです。しかしそれは当人の価値観なのですから、「価値観は人それぞれ」に則ってしまうのなら何も言うべきことはなくなってしまいます。
でも自死を選ぶことは悲しいと思う自分は確かにいる。特に親愛の友人ならなおさらでしょう。できることは死んだら自分がかなしいと訴えることしかないのだと思います。そうして自分のことに置き換えてみれば、主人公の終盤の台詞「俺は、葵がいない世界なんて悲しいよ」というのはもうそれしか言えることはなかったのではないかと思い、もっと遣る瀬無い気持ちになりました。
願わくば心にトラウマを背負っていても、現実がつらくても生きていてほしいと思うのは当事者でない者の勝手かもしれません。けど生きていてほしいと思うそれ自体もきっと人それぞれの中に含まれており、当事者でない者にとってはそれを言い続けるしかないのかもなと思います。
P.S この度はテーマ「手紙」で小説を募集した自主企画に参加して頂いてありがとうございました。また何か主催した際には参加してもらえると嬉しいです。
切なく淡い男女の恋愛未満の揺れ動く関係性を描いた作品。
転校した主人公は、駅のホームで電車に飛び込もうとした少女を助ける。その少女は、転校先のクラスメイトで、しかも隣の席だった。ここまでは転校モノによくある展開かもしれない。しかし、この物語はここからの展開が切なく、感動的だ。
実は少女は事件の被害者であり、この経験から声を出すことが出来ずにいた。しかも、事件のトラウマで、家族ともうまくやっていけない。その少女の悲しさ、苦しさ、悔しさが、心に刺さる。そして少女は死を願っていた。
しかし、主人公と少女は、筆談を重ねることで、けして交わることがなかった関係性を築いていく。それは優しく、丁寧で、ゆっくりと進む、筆談であり、少女が事件以来一人で抱えてきた「言葉」の解放であった。筆談はやがて、交換日記へと進展する。
主人公は先生からも「友達になってくれ」と頼まれていたが、例えそんな依頼がなくても二人は関係を構築していっただろう。
この世界からいなくなりたい少女を、主人公は何とか引き留めようとする。果たして、少女は……? 少女と主人公の関係は……?
是非、ご一読ください。
レビューですが、タイトルをそのまま書かせて頂きました。
色々と考えたのですが、これ以上この物語に相応しい言葉はありません。思い付きませんでした。
儚く、切ない物語でした。読了後の胸中色々な思いがグルグルしてます。
泣く、のとは何か違う形容しがたい感情です。
他の皆さんとは違うかもしれませんが、それでもあえて、私なりに表現させてもらうなら、とても素敵なお話でした。
心のあり方は本人しか分かりません。
ズレがあるから、すれ違います。
それでも、葵の書いた文字は彼女の言葉で、短くまとめるために考え、筆談する彼女を素敵だと感じます。
タイトルと同じ、物語最後の文章で指を止め、暫く画面を眺めていました。
ネタバレになってしまうので、応援コメントの方で書かせて頂きましたが、あのように思っています。
読み終え、タイトルをもう一度読み返して、彼女とまた逢えるといいな、ともそう思いました。
なんか、長くなってしまいましたね。
でも、凄く心の琴線に触れる物語でした。ありがとうございます。