第2章 女子校潜入から異世界逃走まで

#06 はじめての女子高潜入

 昼休み、多くの生徒の話声とか弁当の匂いで嫌でも目が覚める状況。

 まぁ、俺が目を覚ましたんで目が覚めるのは間違いないが――


「ねぇ、あなた何年生?」


――匂いはなんかこうフローラルな感じ。


「すみませんでしたっ!!」


 つまり、俺は今、女子の花園。緑野女学園にいた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 適当に人気のない教室に入って、息を整える。


(何でこんなことに……)


 さて、俺は自分から女子校に潜入した訳ではない。

 目覚めたら、そこは女子校だったのだ。新手の異世界転移モノかよ。あっ女子校を異世界に例えているんだけど。

 最も、異世界転移は世間で広まっている『女神様が出て〜』という流れではないってのを一応、宣言しておきたい。


 胸に手を当てる――柔らかい。


(何でなんだよぉぉぉっんっ、あぁっん)モミモミモミ


 女体化した自分の身体は中々の感度で無意識に太ももを擦り合わせちゃうし、パンツはジメジメしてくるし。スカートに入る風で微妙に冷える液体が何とも言えない感触を……。

 はぁはぁ……状況を整理しないと。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 昨日、家に帰った俺は自身がEDであることを確かめた。確かめると言ってもネットに乗っていたアンケートに応える形式。

 そこで、まだ恋人パートナー居ないし気にする必要ないんじゃねと思って安心したのも束の間、あることを思い出したのだ。


――せいしは私の元に。


 この前JK――成美に送られてきたメッセージの一文であるそれは、かなりの破壊力を持ったままだ。

 ストーキングした結果、成美がいい女の子であることと、俺のことがめっちゃ好きってことしか分かっていないし、あのメッセージの詳細は調べられてない。


『まだ調べていない場所があるじゃないですか』


 マオに言われ、あぁ成美の家のことか。そう思っていた翌日、まさか女子高に送り込まれているとは……。

 今まであいつらには色々なことされてきたが、女子高潜入は、はじめてだよ。流石に。



『性転換魔法』で俺を女体化させ、

『昏睡魔法』で眠らせたところを、

『透明化魔法』で女子高に放って帰る。



 うん、こんな流れだろう。チャーが面白そうと企画して、ユウが嫌々手伝った感じだな、これは。


 と、その時――


「よいしょっ、ブラ乾いたかなー、っ!?」


 ――ガタガタとドアが開いた。


(ぬっ、裸……だと)


 制服を脱ぎ捨てながら入ってきた女の子と目が合う。

 彼女は既に下着を取っており、その豊かな膨らみが――ん?

 その頂点に俺の目は奪われた。


「……陥没?」


 俺は彼女の顔がみるみる赤くなっていくのを見て、自分の口が勝手に動いたことを理解した。

 叫び泣き出しそうな彼女の口を手で塞ぐ。運のいい? ことで俺は今、女体化している。

 むぐぐぅっ。抵抗する彼女を見ると何だかイケナイことをしている気分になる。勿論イケナイことなんだけど、ほら、俺今女の子だし。ナイスバディーなJKだし。


「ちょっと待て、おr、私が悪かったって」

「むぐぅぅっぅ」


 声も人気声優になれるんじゃねボイス。あぁ、もう女体化した自分とエッチしたい気分になるのだが。


「みおー、ブラ乾いてた、の……ごめんなさーい」

むぐぅぅぅごぉぅのぉぉねぇって違うのぉ

「おま、ちょっ待てやー」


 開いたままのドアから目撃され、さらに誤解された様子。

 絶対、ゆる百合してると思われたし、その俺達は走っていった彼女を止めようとして、コケてしまった。


「…………」

「…………」


 唇に生暖かい感触。鉄の味がじんわりと……って、この女の歯が唇に刺さってメチャクソ痛ぇんだが。

 目の前のクリクリした目尻に涙が溜まっている。やべぇ、歯ブツケて痛いのはコイツも……


「初めて……ファーストキス」

「えっそっち? てか、ファーストキスは初めてしかありえねぇだろ」

「…………」

「…………」


 少しの間見つめ合う。俺が押し倒した態勢のため、自分のダイナマイトが重たく疲れる。

 ブラは付けているが、重力の影響が大きく、ふと俺は彼女の胸に自分の胸を乗せてしまう。


「あぁっん」

「ぬほっ」


 待て、女体化した俺って感度高いと思っていたけど、案外女子ってこれが普通なの?


 そう思った瞬間――ゴスッ、とだるま落としのコマが飛んで、だるまが下に落ちる。


「「ふぇっ!?」」


 俺の大きな胸が消え、彼女に更に密着する。

 吐き出した声は、段違いに低くなっており――俺は今、男に戻っていた。


「ふぇっえっどっ」


 目の前の彼女は混乱している様子。目の前の女がいきなり男になったのだから仕方ない。

 うん、今のうちに逃げよう。


 そう身体を起こし、ドアの方を向くと――


「「「へっ変態よぉ!!」」」


 ――時すでに遅し。何人かの女子がそこにいた。



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