#10 体育祭開幕するんじゃ
「なぁ、ケフィー。俺が知っている『体育祭』とは全く違うと思うんだけど、この世界ってそんなもんなの?」
「……もう、分かってるでしょ。うちの校長のせいよ」
俺の疑問にケフィーは、すべてを諦めたような目で答えた。
こいつもこいつで苦労しているんだなぁ、というか何というか……。
「あっ、その防具の付け方間違ってるわよ」
「あぁ、すまん。助かる」
背中に付けるベルト状の留め具をケフィーに直してもらいながら、……てか、体育祭に防具ってなんだよ。
体育祭って普通、体操服だろ。俺はブルマの時代じゃないんで、別にブルマがいいとかじゃないし、普通の体操服でいいんだけど。てか、体操服に興奮する訳でもないんだけど……
――何も、全員が全身メタルプレートじゃなくてもいいじゃねぇか!
「くっそ暑いんだけど、これ……」
「私も同じよ。暑いったらありゃしない」
この学校、シーガデル女学園を一言で言うならば、『お嬢様学校』だ。
基本、おっとりとした礼儀正しい学生が多い。容姿も、異世界だからか、総じてレベルが高い。
……まぁ、今はそのメタルプレートで台無しなんだけど。
汗だくになりながら、辺りを見渡すと……
「ユウさん! ユウさん! とってもカッコいいです! 似合ってます」
「そっそうか、ありがとうな。マオもいい感じだぞ。まるで、魔王時代みたいだ」
「……匂い、嗅ぎます?」
「……じゃぁ」
……ユウとマオがチチクリあっていた。
「何しとんじゃ、お前ら」
一応、あいつらの『同居人』で、保護者的な立場の俺は注意しに行く。
「えへへ、冗談ですって。心配しないでくださいよ、コータロー。周りの目はちゃんと考えておりますので」
「そうか……それは申し訳ないことを」
「えっ、嗅がせてくれないの……」
……ユウが残念そうに言った。
「おい!」
てか、この前。校長が「ついでに」ということで、ユウの情報を教えてくれた。
ユウは元々、この世界の人族最強の魔法騎士――『勇者』として、魔族と戦っていたそうだ。
今は引退していて、マオたちと楽しく好き勝手に暮らしている。引退というか、もう『勇者』は必要なくなった、というか。
ついでに、ユウは匂いフェチだそうな。
「でも、ユウさんが望むのならば、いつでもどこでも良いですよ」
「いや、冗談だよ。というか、マオも俺のことだけじゃなく、自分の羞恥心的なもんを優先してもいいんだぞ」
「そんな、羞恥心なんて……ハレンチな」
「いや、羞恥心を感じないでやるのが、ハレンチじゃなかったか」
「言ってみたかっただけです!」
「それは、それでよろしい!!」
――もう、俺、ユウとマオの会話を理解するのは、無理な気がしてきた。
ちなみに、マオは、この世界の魔族最強の(そもそも、魔族でもツノ付いている以外、人族と見た目は殆ど変わらないんだけど)支配者――『魔王』として、ユウと戦ったそうだ。
んで、何でこんな二人が付き合っているのか……んで、なぜこんなにもポンコツになっているのか。
ユウはケフィーがいないと、魔法を使えない状況だし……魔法騎士の『魔法』の部分はどうしたんだよって、マジ。
まぁ、俺はというと、この世界の住人じゃないからか、魔法適正がないらしく、どう頑張ても魔法使えない……かなしみ。
「(´Д`)ハァ…」
――そういえばユウって、玉がないんだよなぁ。
ぼけぇっと、脳死状態で、ついついユウの下半身に視線を向けてしまうのは、致し方ない的なアレだろう。
メタルプレートの上からは何もわからないけれど……
その時、笛の音が鳴り響いた。日本の小学校の運動会で使うような"ピー"ってやつ。
「はーい、みんな私に注目!! はい、私、このシーガデルの校長先生のこと見て! ほら、ほらほらほら!」
笛の音に顔を向けると、年齢をいい加減、気にしたほうがよさそうな校長が『体育祭』のルール説明をし始めた。
「ついに始まるのね……はぁ」
隣に来たケフィーが憂鬱そうに言った。
「ため息つくと幸せ逃げるぞ…………はぁ」
「自分で言いながら、ため息吐いてるじゃない」
「まぁ、人生そんなもんだ」
「何よ、それ」
「俺の名言ってな」
「テキトウね、本当……」
「まぁ、でも」
――まぁ、こんなアホみたいな行事に付き合わされるのも、あのJKに命と下半身を狙われるよりはマシなのかなぁ……
「(日本でうじうじしているよりも、気分転換になって、いい解決方法でも思いつくだろう……全身メタルプレートでも)」
「なんか言った?」
「言ってない」
「ほら、そこ!
俺たちの体育祭(
それは、突然の出来事だった……。
――てか、いつ異世界に来たんだよ。……JK
まじで、
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