#11 それのどこがアブノーマルなんだ!
「さて、始まりましたね。第……何回でしたっけ」
「そんなもん知るか、ケフィー! ほれ見ろ、マオから溢れ出る可愛いオーラを! メタルプレートを着ていても分かるぞ」
「あっあんたねぇ……せっかく私が少しでも、それらしく仕事しようとしたってのに」
「マオが出場してるのってのに、『実況』なんてやってられっか! んなもん、コータローとかにやらしとけって――痛ッ! 何するんだ、レスタ!」
ユウがケフィーに向けて早口でまくし立てていた所を、校長補佐のレスタが出席簿で殴った。
「ユウ、お前は一応、元勇者なんだ。力を制限しなくてはいけないとか、校長もお考えなのだろう」
「……元勇者ねぇ……ははっ」
「おい、ケフィー無駄に笑ったろ。鼻で笑ったろ。今じゃ俺はあんま強くねぇかもだが、現役時代は魔法剣士としてだな」
「……その『剣』も今じゃ折れちまって」
「……可哀そうに、……『勇者よ! 立ち上がって!』ww」
「おっお前らなぁ……ぐすん(´Д⊂」
「「(……意外と気にしてたんだ)」」
ユウは、ケフィーと校長補佐にムキーと怒ったような、泣いているような顔で……
「…………( 一一)」
何か言い返したそうで、でも言い返せないのか。じとっとした目で、ケフィーと校長補佐を机に突っ伏しながら見るだけだった。
その目に、ケフィーは『あぁ、やっちゃった』と。
そして、校長補佐はユウをいじるのに飽きたのか、「ユウの目に見られても興奮しないわね。スクリちゃんのとこ行ってくりゅ」と言って、その場から離れていった。
俺は、校長補佐と入れ替わりにケフィーとユウがいる実況席に向かう。
「あっコータロー、おはよう」
「おはようケフィー。……お前、いっつも誰かしらの面倒見ているな」
「まぁ、慣れてるからねぇ」
「慣れれるってか、慣らされてるだなぁ……同じく迷惑かけてる俺が、言えたことじゃないかもだけど」
「コータローはいいのよ……コータローは」
――えっ、何。そのケフィーの反応。もしかして、俺のこと……その、好きっぴ?
「お前らって結構お似合いなんじゃねぇの」
「はぁっ!? 何言ってんの、ユウは!」
「恋愛上級者の俺の言うことは、聞いておいて損はないと思うぞ」
「何が恋愛上級者よ。
「マオは、俺の『魔王を倒そうとボロボロになっても、何度も立ち上がる姿』に惚れたって言ってくれたんだ。それのどこがアブノーマルなんだ!」
「マオが当時身に着けてた鎧をあんたの剣が貫いたときに漏れた『汗の匂い』に惚れたあんたのことを言っているのよ。この匂いフェチ! ふぇチン!」
「ふぇチンって何だよ!」
「ふぇチンは、ふぇチンよ! このふぇチン」
ケフィーは、ユウの下半身を見ながら、顔を真っ赤にして言った。
そんなケフィーを見ると、ついからかいたくなるのが、俺らの悪いところかもしれん。
俺は、装備したメタルプレートにつけた、革製のベルトのポケットからあるものを取り出した。
「ケフィー、渡したいものがある」
「えっ、何よ」
俺は取り出した、棒状の赤いクリスタル……魔力鉱石をそっとケフィーに渡した。
「これを俺だと思って、その疲れた心を慰めてく……痛っ!!」
「…………(#^ω^)」
「ケフィー、無言は怖いって。お前が無言で殴ってくるの、めっちゃ怖いんだけど!」
「…………」
――アカン、やばい。俺、JKに殺られると思ってたけど……俺の死期はここだったか。
「ケフィー、落ち着っ……痛!!!」
「ユウ、あんたも同じよ! もう、遊びに行ってくる!!」
「おっ俺は、ケフィーをそんな不良に育てた覚えはありません!! なぁ、コータロー!」
「そうだそうだ! それに遊ぶって、どこ行くんだよ」
「知るかボケナスチン! 別の男たちと遊んでくりゅっ」
「「べっ別の男って誰だぁぁぁ!!!」」
ケフィーに殴られた痛みで、地面にのたうち回りながら俺とユウは走り去っていくケフィーの背中を見ていた。
少しして、立ち上がった俺とユウ。
「そういえば、何でコータローは実況席に来たんだ?」
「あっそうだった。いい加減、体育祭始めろってみんなに言われて、ここに来たんだった」
「あぁ、そういうことか……始めるか」
「そうだな」
そう俺とユウは、仕方ないなぁとか、はぁとかため息を吐きながら、体育祭開始の合図を打ち上げた。
打つと同時、お嬢様たちの歓声が聞こえたが、若いもんは元気だなぁと。
よくわからない感想を抱く、俺とユウだった。
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