#同居中の『勇者』達に勝手に出会い系に登録された俺の気持ち
たまかけ
第1章 JKとの出会いからEDまで
#01 出会ってみた
「あぁぁ、うぅぅぅ」
「気持ち悪ぃ声でてるぞ、神馬」
スマホのメール画面を開いたまま、大学生協の食堂の机に突っ伏していると日替わりランチ(今日はペッパービーフ丼)をトレーに乗せた男が話しかけてきた。もちろん赤の他人ではなく、高校時代からの友人で親友とも言っていい。名前は、山野辰巳。
「気持ち悪いのはもともとだからセーフ」
「それもそうだな」
「否定はしなくてもいいから、即肯定するのはやめてくれ。泣く」
机から上半身を離して、山野がトレーを置くスペースを確保。机に突っ伏すのは、机確保の為もあっていつものことだったけど、今日は机が恋しい。また、頬をすりすりしたい。
「で、どうしたんだ」
「すりすっ……これを見てくれ」
メールアプリを開いたままスマホを渡す。山野は、ざっと人差し指スクロールをして、
「お前、何万使ったんだ」
「一銭も使ってねぇよ。3万無駄に( )溶かした山野とはちげぇんだよ」
「無駄に、じゃねぇよ。あと少しでヤらしてくれたんだけど、手持ちが無かっただけなんだよ」
「あぁ、そうだな。惜しかったな」
「そういうお前も、出会い系始めたってことだろ、これ」
「まぁ、出会い系っちゃ出会い系なんだが」
山野が某出会い系に登録して3万溶かしたというのは、高校時代の仲間で周知の出来事。たぶんずっとネタにされるだろう。少なくとも俺はネタにするし。
ただ、出会い系に登録していたことをネタにはもう出来なくなった。件のメールは、出会い系からのものだった。俺は、自分で出会い系に登録したんじゃなくて、『された』ってのが正解。個人情報がバラバラとネットに上がっていたのを知った時は、あいつらを散々怒鳴り散らしたけど、今は感謝している。学校帰りにお高いアイスでも買って帰ろう。
何たって、『出会える』んだから。
「ん?」
山野もそのことに気が付いて、驚きの声を上げた。
「お前、これって」
「スパムかもしれないけど」
一番最新のメールには、『今晩会ってみませんか』と、レストランの情報が載っていた。
「いや、行ってみろよ。写真の素顔も可愛いし、折角の機会だ……ヤってこい!」
「だよな!」
スパムという可能性は、山野によって完全に消失した。
俺たちは、食堂で立ち上がり良くわからない握手を交わした。
――周囲の目が痛い。
◆ ◆ ◆ ◆
山野の妹にデートの服装のアドバイスを貰って服装は、入学式の為に買ったリクルートスーツ。髪は自分で整えた。後でまたシャワーを浴びるとは思うが、体を念入りに洗ったので身だしなみは完璧。清潔感が命というアドバイスを参考に頑張ったのだ。
家に帰った時、あいつらはいなかったので、ちゃぶ台の上に『アイス冷蔵庫。食っていいぞ』と書置きまで残した。
ここまで順調すぎてにやけそうになる。
「あの」
待ち合わせ場所をうろうろしていると、話しかけてくる女の子がいた。
もちろん俺みたいな一般顔に近づいてくる女の子は、現在一人しかありえない。
「初めましてだな。俺が神馬幸太郎だ」
「知っていますよ。私は、紫雲成美です」
彼女は、礼儀正しく頭を下げた後にニコリと微笑んで見せた。
おしゃれなイタリアンなフランス料理店(実際、何の料理か分かんない)で、彼女とゆっくりと他愛ない会話をしていく。
彼女は、猫が好きだけど、動物が禁止の建物に住んでいるから動画で我慢していて、最近は猫鍋にハマっているそうだ。
ちょうど、俺も件の動画を見ていたので、話があって盛り上がった。
彼女とは気が合うらしく、好きな音楽、スポーツ、食べ物など簡単な話題でも話が膨らむ。俺にとって、このフランス料理? は初めてではないらしく、脳みそがさっきから「うまいうまい」と連呼している。口の中が幸せでいっぱいだ。
そんな彼女に惹かれない男がいるだろうか。彼女も俺のことをよく思っているようで、俺たちが今夜を一緒に過ごすのは至極道理にかなっていた。
おしゃれなレストランから外に出る。事前に調べていたので、スマホを取り出すことなく彼女をホテルまでエスコートする。
現地で下見まではしていなかったけど、その場の雰囲気っていうのか、人の流れなのか、迷うことは無かった。
ホテルのすぐ近くで、ふと気になったことを彼女に漏らす。
「なぁ、君って18歳なんだよな」
「そうですよ。ほら、学生証です」
『緑野女学園 第三学年C組 18歳』
彼女は、4月3日生まれで学生証が配られた時にはすでに18歳になっていたのだ。緑野女学園の学生服(多分)を身にまとった彼女は、とても幼く見えたので少し心配になったのだ。
いや、18歳でも高校在学中だったらアウトか。う~ん。大丈夫だろ。俺19だし。1歳違いだし。
ホテル(といってもすることするに特化)の受付のお婆にじとりと睨め付けられ、ドギマギしながらも、「シャワー付きで」と答えた俺の声は、震えていた。
シャワーを浴びいよいよ、ことが始まろうとしていた。
(今宵、俺はDTを捨てる)
ドゥンドゥンドゥーンドゥドゥドゥドゥーンって曲が頭の中で流れている。何の曲か分かんないけど、脳みそが混乱してるのは分かってる。
同じくシャワーを浴びた彼女が俺の横に座る。ベットが彼女の体重に合わせてゆっくりと沈む。
「…………」
「…………」
あれ、こういう時って何て言って始めるの? 試合開始! とか、いざ参る! とか。あぁ、聞いてない。知恵袋で聞いてない、探してない。雰囲気的にググれない。
一つのベットの上で2人、もじもじと無言でいる。
これは、まずい。このままではまずい。同じシャンプー使ったのに、めっちゃいい匂いするし。触れた肩が熱い、メルトしそう。
「あの……」
「はっ、ひゃい」
「もう少し、お話しませんか」
「そっそうだな」
お話は散々レストランでしたけど、焦ったらダメだ。
でも、ここで話す内容は、少しずつあれだ。アレな内容にしないといけないんだ。
話題を考えていると彼女が口を開いた。
「ねぇ、幸太郎さんはどうして出会い系に」
「あっ、それはガチの事故っていうか。友人のノリっていうか」
「幸太郎さん自身が登録した訳ではないと、そういうことですか」
「あぁ」
彼女は、俺の目をしばらく見つめ、ホッと息を吐いた。どこか嬉しそうな様子に、こっちまで嬉しくなる。
ふと、思ったことを彼女の笑顔に吹っ掛けてみる。
「俺って出会い系に登録されたのは、今朝なんだよな」
「うん、知ってる」
「どうしてすぐにメールを送ってくれたんだ」
少し不思議だった。家にいるあいつらが勝手に登録してからすぐに彼女からメールが来たのだ。登録完了メールから僅か数分足らずで。
偶然サイトを開いた時に一目ぼれした、とか言うのだろうかと思っていたら、予想外の言葉が返ってきた。
「あぁ、まぁいいか……それはずっと検索していたからだよ」
「ん? どゆこと」
「だから、幸太郎さんのことをずっと調べていたの」
「ふぇ?」
「今日、レストランでお話している時、本当は幸太郎さんの趣味って全部知っていたの。だから、話を合わせることもできたし、レストランだって幸太郎さんがおいしいって言ってくれるところを選んだから」
寒気がした。シャワーで濡れた身体に冷や汗が混じり始める。血が冷えていき、身体がふにゃふにゃしてくる。
何故か、チン〇ンだけが元気ビンビンのままで身体が動かなくなる。
「私、幸太郎さんのことを前から知っていたんだよね」
ヤバイ、まずいまずぃまじぃm……頭が重い…………えっ、触られて……
「こうなることをずっと前から期待してたの……」
…………もう、えっ……やめ……うぅぅ……こんなんで、卒業なんて………
…………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あぁぁぁぁ…………
――俺は、襲い来る眠気に耐え切れず、目を閉じた。
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