2.『たか★たか☆パニック~ひと塾の経験~』著: 山本のり ジャンル:恋愛(No.008)

 まず初めに断っておきますが、本文は『lesson83 やらぬなら。やらせておしまい謝肉祭カーニバル』迄を読んだ上で書いたものです。従って、批評もそこまでで見える物を書く形となります。ご了承下さい。


 さて、本作はラブコメ風の作品ではあるのですが、二つの特徴が有ります。


まずひとつは主人公が女性という事。ちなみにカクヨムでは女性主人公=恋愛、男性主人公=ラブコメという事になってます。これもあんまり良い分け方とは思えないのですが、今は良いでしょう。


 で、女性主人公なのでジャンルは「恋愛」ですが、一般的な用語で言えばラブコメが近い作品です。女性主人公の。乙女ゲーに近い……のですが、それとはまたちょっと趣が異なる感じ。


 もうひとつは、主人公達の年齢が中学生である、という事。大体この手のラブコメというか恋愛物は、大体が高校生です。中には大学生もあるにはあるのですが、基本は高校生。ここには色々理由があるんですが、それも今は割愛。


 何でそんな事を提示したのかというと、上記二つの要素が、この作品について考える為に重要になってくるからです。


 ひとつめから行きましょう。女主人公。人は時に何故か「ボーイミーツガール」の作品を書きがちです、自分もそう。だって、そこには確かな魅力がありますから。


 しかし、そこには決して強制は無いし、必要性も有りません。従って「女主人公」や、「女主人公とヒロインの関係性」という話にしてはいけない、という理由は一切無いんです。そう言った気づきが広がったのは『魔法少女まどかマギカ』あたりだったような気がしますがそれも割愛。


 何が言いたいのかといいますと「主人公の性別に拘束は特にない」という事です。つまり「女主人公」と「複数の男」によるラブコメなり恋物語でもストーリーの構造には何一つ傷はつかないんです。


 では、何故世にある、特にライトノベルや漫画の類は主人公が男なのか。答えは簡単。見る側に男性が多い。他にも理由は有るでしょうがこれが大きいです。


 その辺りを踏まえて本作。主人公は女性。複数の男。構図としては乙女ゲーに近いです。つまり「男性相手に受けが悪くなる可能性がある」という事です。これは自分の勝手な解釈ですが、主人公の性別はどちらでも受け手の影響は少ないけど、攻略対象(という言葉にしておきます)の性別は女性にするのが吉です。男性一人女性複数は何故か女性も好んでくれるんですよ。何故か。


 次に二つ目、主人公達の年齢です。恐らく大人と子供の端境期であり、就職、受験、更には結婚等を意識するゾーンであるからか、特に必要が無い限り、主人公の年齢は「高校生」に設定される事が多いです。多分皆高校生活に悔いが有るんだよ(勝手な想像)。


 逆に(ラブコメ、恋愛で)中学生が主人公というと、パッと思い浮かぶのは『月がきれい』『イリヤの空、UFOの夏』位。何でそんなに少ないのかは分かりませんが、やっぱり書く側の記憶が余り無いから、なんでしょうか。


 で、その辺りも意識に入れつつ本作を見た場合、キャラクターの「精神年齢」に「ブレ」が見られるような気がしました。場所によっては中学生というより小学生っぽかったり、かと思ったらやけに大人っぽかったり。その辺りの統一感が無い、かなぁと。勿論、中学生の思考回路なんて人それぞれだと言われてしまえばそれまでではあるのですが。


 後、それと関連するかは分かりませんが、全体的に作者の「色」というか「線」みたいなものが強く通り過ぎているかなぁという印象を受けました。勿論ここは独自性にもつながる部分ですし、その「線」を通して居るからこそ、「ラブコメを苦手とする人」に向けられるのかなぁとも思いますが。或いは「ラブコメを苦手とする人」に向ける為にあえて「線」を通したのか、その辺りは分かりません。


 戦略的な話にはなりますが、受ける作品を作るという事を考えた場合、まずは「○○好き」に直接訴えかける方が上手くいくのではないかなぁ、という感じが個人的にはします。もし、そうでないのならば、自分の「線」を通すという意識を少し抑えた上で、他のジャンルと噛み合わせる、というのが割と得策かなぁという感じもします。異世界転生物大っ嫌いだけど『この素晴らしい世界に祝福を!』だけは読めた、という人は多分居るはずで、それと全く同じ理屈。要素が多ければ働きかける相手も多いだろう、という事です。


 何だかマイナスっぽい事ばかり書いてきましたが、別にまずい作品という訳では有りません。キャラクター(特にメイン)の持つストーリーは凄く良く出来ています。恋愛が絡む作品ではここが肝となるので、そこがしっかりしている、というのはいい事だと思います。


 作者の「線」を通した部分だって、決して悪い事だけでは有りません。途中に小話が入るスタイルはどこか王雀孫を思い出します。出し方は考える必要があるかもしれませんが、こういう特色は一つの武器でもあると思います。やっぱ人は「どっかで見た」物には冷たいですから。


 後はまあ、キャラクターの持つストーリー(メイキングに関しては作者とは違う他人という意識をもう少し持った方がいいかもしれませんが)という、この作品の長所を生かした上で修正箇所を考えていくと、どうしても作者の「良い部分」と絡み合っているので、難しいです。前にも他の作品で似たような事を書いた気がしますが、良さを消して平凡にしては何の意味も無いので。


 何だか纏まりの無い文章で済みません。ただ、一つだけ言えるのは、各キャラクターの持つストーリー。そこの出来は非常に良い、という事です。そこを活かして、尚且つ「凡庸」にならず、「自分の色」を出し過ぎず、という微妙なバランス感覚が大事、なんだと思います。


(作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054882612445

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