2.『12メートル下で笑う血だらけの彼女』著: 澄川時乃 ジャンル:SF(No.012)
まず初めに、自分は物語が好きで、「いいな」と思った作品に出会うたびに、その「構造」みたいなものを無意識に分析し、その上で「こういう構造をしていたら、こういう感動を覚えるんだ」という結論を得ます。
なので、新しい作品に出合った時も「ああ、こういう所が良く出来ているから、こういう感動があるんだな」という風にある程度の納得をします。だから、作品から受けた感動と構造の上手さは基本的に相関していました。
前置きが長くなりましたが本題に入りましょう。本作はその関係性からすると、良い意味でイレギュラーな存在、と言って良いと思います。これ、誰に言っても驚いて貰えなくて悲しいのですが、個人的にはとんでもない衝撃なんです。今までは「自分が受ける感動」に対する「技術」を説明する事が出来ましたし、なんならある程度は真似も出来たと思います。
でも、この作品はそれが出来ない。「これかな」という要素も思い浮かばない。勿論、構造としては良く出来ているんです。でも、同じ着想が自分に有ったとして、これだけの物は絶対作れないと思います。正直「作品に感動を巻き起こす魔法をかけている」と言われた方がまだ納得するくらい。ちなみに、自分が見てきたあらゆる物語では、このイレギュラーは初めてです。一応、キャラクターで一人居るんですけど、それくらい。
と、まあ非常に個人的な絶賛を書き連ねましたが、それだけでは批評にならないと思いますので、細かな話を少し。
とは言っても、話の構造に関して、文句をつける所は一切ありません。なので、本当に僅かですが気になった部分を二つほど。
一つは、結末。ただ、「間違っている」という話ではありません。解決法はこれで筋が通っています。ですが、本当に僅かな違和感みたいなものを覚えました。聞くところによると、元はバッドエンドの構想だったようなので、それをハッピーエンドに舵取りをした際、その違和感が生まれたのかなぁという感じ。イメージとしてはバッドエンドの正規ルートを0、ハッピーエンドの正規エンドを10として、9.5とかその辺りになってるような感じ。本当に僅かではあるのですが、ここの違和感は修正出来るとより綺麗になると思います。
それから、ネタバレにならない様にかきますと、作中での「回数」。話の展開を考えるとある程度の数をこなすという形が正しいのはその通りです。その過程も文字数と相談しながらよく表現していると思います。なので基本的には問題は無いのですが、その「数字」に何か意味を持たせられたら更に良くなると思いました。これも本当に微妙な部分ですし、表に出し過ぎても駄目な部分なので何とも言い難いのですが、一応。
と、一応気になった部分を書いては見ましたが、個人的には些細な問題。上の二つで減点が20だとすれば、感性に訴えかける力強さが加点1000位なので、全体で考えたら満点以上です。一応ランク分け上SS+に置きましたが、正直な所SSSのランクを作って、そこにおいてもいいくらい。『月に寄りそう乙女の作法』の時も同じ可能性を考えたけど、やっぱり「感性が近い」だけでは説明がつかないと思うんですよね。
(作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054883573887)
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