神霊とともに疾れ。新石器時代のシベリアに息づく魂に触れる、稀有なる体験

遥か昔、遠いシベリアの地には、本当にこんな文化や歴史があったのではないか。
そうだと言われたら信じてしまうほど、血肉と魂を持った人類の生き様がリアルに綴られた、壮大で凄まじい物語です。

五感に訴えかけてくる、厳しくも美しい自然を深く味わうように、毎日少しずつ拝読していました。
約60万字という長い物語ですが、素晴らしく心地よい、稀有なほどの没入感がありました。

あらゆる自然物に宿った神霊と共に生きる森の民の元へ、太陽神を信仰する開拓者・エクレイタ族の使者がやってくるところから、お話は始まります。
互いに穏やかな友好関係を望みつつも、温暖な南の地から極寒の地へと先立って派遣されていたエクレイタ族の開拓団長の裏切りにより、二つの民族の間で凄惨な争いが起きてしまい——

文化が違うということは、人が生きるための礎が違うということです。
何を信仰するのか、何を食べて何を着るのか。
身体を形作る全てが、そこに宿った魂の在り方が、根本から違うのです。
そんな中、森の民の狩人・ビーヴァとエクレイタ族の使者・マシゥの間で結ばれた友情が、とても純粋で尊いものに思えました。

ビーヴァがとても魅力的です。実直で、温和で、女心にはちょっと疎いけど、家族と友を大切にし、誰よりも自然に寄り添って生きるこの青年が。
マシゥが彼に惹かれた理由がよく分かります。

目を背けたくなる残酷な展開や、胸を締め付けるほどの哀しい別離もありました。
でも、確かに血の通った登場人物一人ひとりの命運から、ひと時も目が離せませんでした。
読み終えた今も、彼らの生き様が脳裏に焼き付いています。
ビーヴァたちが、頭の中に住み着いています。

この作品に出会えて良かった。幸せな読書時間でした。
素晴らしい物語を、本当にありがとうございました!

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