本来なら、言葉とは色彩を持たぬものです。
しかし、この作品では言葉によって見事に色彩が表現されています。
言葉から放たれる様々な色たちは、実際に目の前にあるわけではないのに、驚くほど自然に、そしてはっきりとその景色を想像させ、私達はそれを「見る」ことができるのです。まるで、言葉自身に色彩があるかのように。
そして、そんな色鮮やかな世界のなかで、優しい物語は動き始めます。
突然起こりくる悲劇。後悔と葛藤。そのなかにある一筋の希望。
悲劇を乗り越えて、希望を掴み取ったとき、彼らの見る世界には優しく、そして眩しいほどの美しい色たちが溢れ、彼らに微笑みかけます。
とても素晴らしい作品でした。
登場人物たちの未来には、鮮やかな色達がこれからもきっと溢れ続けることでしょう。
「15センチ」をキーワードにしたコンテスト。
いくつか読みましたが、この使い方はおそらく
誰にも思いつかなかったことでしょう。
誰もが、その斬新性や独創性に驚き、
「こう来るか!」と感じさせられるはず。
柔道なら「一本!」と主審が手を上げてます。
でも、これは小説のコンテストでもあるので
「お題消化の上手さ」を競うのは
作品全体のほんの一部だけのこと。
じゃあ、作品はどうなの?
……はい。いいです。
「みずみずしさ」や「やさしさ」や「純粋さ」
が行間の隅々にまであふれています。
これは作者の人となりによるもの――つまり、
「愛」とか「生命」とかいう曖昧なものへの
作者の回答が詰め込まれた1万3000字。
適度に描き込まれ、さりとて過剰ではない文体で
いくつもの色で全体を染め上げながら
ナイーブな物語を展開させる。
――お見事でした。
最初から最後まで、ずっと浸っていたい作品でした。
ひとつひとつの言葉もそう。見えてくる景色もぎゅっと。
色が塗られていたり、単独で立っていたり、存在が重ねあわされる。
他の人には思いつかない15センチ。
この15センチはせつないけれど、同時に浮かんだ希望みたいで。
3の「塗り潰される」という表現で、幕を下ろされたようなきもちになって。
覆い被さるここがあるから、余計に最後の風景が生きてくる。
約束を果たせなかった後悔が、今になって恋人を支える。
この世界、大切にしていきたいです。
同一世界のミステリー、どんなのかな。
読者としては、友人の恭さんの存在が気になります。
ぜひ彼が主人公の作品も!