硬質で、そしてとてつもなくやわらかい

宇宙船があり、ロボットがあり、かっちりと細かく原理が説明されるという意味では確実に、非常に硬質な、そして古典的なSFと言っていい作品。
しかし、この小説のもう一つの特徴は、実は作品自体が内包する柔らかさ、繊細さでもある。特に Episode2以降、硬質な技術が、アルミ・ロビンソン(漂流者ロビンソン!)という一人の少女を救うために使われ始めると急速に叙情性によって、柔らかい人間の心の動きと機械でできた硬質な世界が統合されていく。

若い女性リーダーとしてやや肩肘張った感じのマユミも可愛いし、ぶっきらぼうなメールを送ってくるクルベもいい。
SFの持つ硬質な世界と、人間たちの織りなす、「思いがけなくも柔らかい」世界の双方の中で、アルミという少女がどうなるのか。先が待ち遠しい。

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