共働きの妻と小学校に上がったばかりの子を福岡に残し、未知の土地、大分で単身赴任生活を送り始めた主人公。新しい職場の人々と親しくなるため毎週金曜は飲み会で、健康状態と懐具合に妻から釘を刺されて、面白くない。疲れ気味、やさぐれ気味の主人公を思いがけず癒すのは、少し変わった経歴を噂されるゴマシオ頭のおじさん社員。彼はいつもおいしそうな手作り弁当を持参しているが、その弁当には切ない事情が秘められていた──。こなれて落ち着いた文章と深みのある人物造形が素敵で、読後には大きな満足感とやるせなさ、温かさがあった。
鶏飯のおにぎりと穏やかな微笑みで、あっというまに私の心を鷲掴みにしてゆく八木さん。ああ、おいしそう。食べたい。すぐにでも作ってみたくなる。そんな八木さん家のごはん。思いやりの染みこんだ小さな幸せはいつだって大事なことに気付かせてくれる。愛から紡がれたレシピを、ご堪能あれ!
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