共働きの妻と小学校に上がったばかりの子を福岡に残し、
未知の土地、大分で単身赴任生活を送り始めた主人公。
新しい職場の人々と親しくなるため毎週金曜は飲み会で、
健康状態と懐具合に妻から釘を刺されて、面白くない。
疲れ気味、やさぐれ気味の主人公を思いがけず癒すのは、
少し変わった経歴を噂されるゴマシオ頭のおじさん社員。
彼はいつもおいしそうな手作り弁当を持参しているが、
その弁当には切ない事情が秘められていた──。
こなれて落ち着いた文章と深みのある人物造形が素敵で、
読後には大きな満足感とやるせなさ、温かさがあった。