この社会の闇を覗く勇気はあるか

近年問題視されるようになって久しい児童虐待、それをテーマにした刑事ものミステリーです。ものすごく重いテーマですが、それ引けを取らない文章の力強さ、構成の精緻さ、そして強烈なメッセージ性に圧倒されます。
そもそも児童虐待の問題は周囲が認知しながらも通報にまでなかなか至らないという課題があります。これは、躾との区別とか、いろいろなデリケートな要素を含みますが、それ以上にそれを直視したくない、なかったことにしたいという心理的な働きもあるように思われます。
この作品は違います。真正面からこの問題を見据え、表現します。それゆえ確かに、描写が生々しく、読み進めることをためらうようなパートもあります。だけれども、この作品を読むことで、僕たちはこの問題を認識しておいたほうがきっと良い、そんな気がしています。
序盤の一文ですが「子供の頃に愛を与えないと、愛を与える存在には決して成長しない」という言葉が、読み終わった後もずっしりと残っています。

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