児童虐待を繰り返す親に制裁が下された、その連続殺人事件の真相とは。

気付いたら、一息に読み切っていた。
ちょっと眺めるだけのつもりだった。
時間も時間だし、やることがあるし。
そのはずだったのに、夢中になった。

虐待を受けていたと見られる幼い男の子が保護され、
彼を自宅に送ったことが発端で殺人事件が発覚する。
被害者の死体は熱湯を掛けられて酷い有り様だった。
子に為したのと同じ仕打ちを受けた上で殺されたのだ。

この1件を皮切りに、同様の手口の事件が続発する。
犯人の動機が全ての事件に共通するのは確からしい。
つまり「子どもを虐める親など死んでしまえばいい」
子どもを殺しかねない親なら害悪でしかないのだから。

一連の事件を担当する刑事、徳島の心にも古傷があり、
妻とも思いがすれ違い、苦悩を多忙でごまかす日々だ。
虐待を受けた子ども、児童虐待を監視する施設の職員、
義憤の罪に手を染めた犯人──各々が明かしていく真相。

無駄のない端正な文章で組み立てられたミステリーは、
明快な解決策の見えない社会的課題を読者に提示する。
決して起こってほしくない、けれど現実に起こり得る
悲しい事件の連鎖の果てに、希望はあるのだろうか。

残酷描写あり。
虐待描写あり。
読み始める前にその点は留意していただきたい。
児童虐待は、なまやさしい問題ではないから。

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