この作品はアウトローと少女のバディ物として個性的なキャラクターやテンポの良さ、展開の盛り上げ方などエンタメとしてクオリティが非常に高い。そして同時にコズミックホラーとしてのクトゥルフ神話の魅力も最大限に引き出しているのがこの作品の特徴だろう。絶妙な時代設定に北海道という舞台も合わせてエンタメを楽しみながらもゾクゾクとした感覚を味わえる。連作短編集に近い形式を取っているのもあって非常に読みやすいのもポイント。クトゥルフ神話というとかなりマニアックな題材になるため気が引けると思う方もいるかもしれないが、前述の通り本作はアウトローのバディ物の要素が強いため気軽に楽しむことが出来る(気になる方は同作者の「初めてでもよく分かるクトゥルフ講座」をチェックすると良いだろう。こちらもかなりおススメ)。精力的に他作品とのコラボを行っていることも相まって今後ますます目が離せない一作だ。本レビューを読んで気になった方は是非挑戦してみて欲しい。
それは、とても不思議な物語でした…ええ、今こうして机でレビューを書いている今も忘れられません。そして、忘却を許さぬ足音はもう、ドアの外まで忍び寄っています。麻薬の売人である主人公は、不思議な少女を拾い、そして…これ以上は、私には、その先には…嗚呼!窓の外にも!しかし、これだけは伝えておかねばなりません。すでに音もなく開いた背後のドアから、濃密な気配が湿った音で近付いていても…この瞬間にも、書いておかねばならないのです。この作品の、淫靡な背徳感と怪異の数々…とても面白いです。何故ならばそれは――
とにかくオススメです!クトゥルフの雰囲気と一緒に、ロリータとアウトローのバディ物な雰囲気、いけない恋の香りも楽しめます。好きです!