概要
二年の月日を経て、彼女は別々の生活に戻りたいと告げ、部屋を去った。
見慣れた部屋から失われた、半分の体温、半分の足跡。
その時私は、強く願った。
「こんな思いをするくらいなら、私は卵に生まれたかった」と。
どうか、私とワルツを。
おすすめレビュー
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- ★★ Very Good!!少し寂しくて、暖かいふたり
大切な人とだって、ずっと一緒にはいられない。いつか来る別れの時、どうしたらいいのか……。
すごく優しい物語だと感じました。ふたりはきっと、これからもいろいろあるかもしれないけれど、前を向いていけるんじゃないかな、なんて思えるような終わり方がよかったです。
それもまた、春や冬を表しているような。
卵になりたい椿の辛くて寂しい心も、すごく伝わってきました。だからこそ、優しいお話で本当に良かったなぁ、と。
大切な人との別れだって、「大切な人」なんだから、一緒に乗り越えていけるのかも、なんて思ったりもしました。
ふたりとも、幸せになってほしいな、と。
そっとそう思える、素敵な作品です。 - ★★ Very Good!!「私」を脱皮する季節
>──難しい問題ですね、一概にどちらが良いと言いきれないものだと思います。
とは物語に出てくるニュースでのコメントですが、椿と柊ふたりの関係もそうなのかなあと思いました。
彼女と穏やかに暮らす関係は、たまに不安にもなるけれどやっぱり心地よくて、それを急にうしなうことになったら。こわいです。おいていかないで、という気持ちは切実で苦しい。
椿の感情は、自分が同じことを経験したわけでもないのに知ってると思いました。柊の名前を「美しい」と感じるのも、とてもとてもよかったです。すきなひとの名前は愛おしい。
>私と世界とを分かつ、半透明の境界。
このフレーズが二回出てきますが、それぞれで意味が…続きを読む - ★★ Very Good!!春先のやさしい物語
大切な人から捨てられるような感覚、それがたとえ物語の中だったとしても、きりきりと痛いですね。自分の一部をむりやりちぎられるような感じかなぁ。
中学生頃とはまた違った意味での「多感な時期」を書かれているな、と感じました。うーん意味違うって言われそうだけど。
どっちつかずの自分が嫌いだ。すきになれない、と椿は言います。だったら、誰かがすきになってくれるといいよねえ。とかとか最近よく思います。もし自分が自分のことをすきになれなくても、誰かが自分のことをすきだったら。だから、椿はきっと大丈夫!
色や香り、いや、多分いろんな事象にいろんな意味を込められているのかなあ。いろんな物語に出て来る煙草…続きを読む