過去の真実 2

 五限目の途中に学校についた拓は、職員室に向かっていた。


「失礼します。二年の砂川拓です。長谷川先生はおられますか?」

 

 生徒が入ることを許されたラインまで職員室の中に入る。

 捺輝を探すと、自分の席で突っ伏しているのを発見した。


「長谷川先生。呼ばれていますよ」

「はあー」


 他の先生に声をかけられ、上体を起こした捺輝は拓のもとへ歩いてきた。

 いつもとはうって変わった捺輝の状態を見て、


「何かあったんですか、先生」


 何も答えずに猫背のまま捺輝は拓に何の用か、とだけ聞いてくる。

 欠席予定だったが授業予定表を受け取りに来たことを伝えた。一度、自分の席まで戻った捺輝は紙を二枚取り出して拓に渡した。


「授業予定表と、これは?」

「委員会決めのかーみー。別に提出は強制じゃないから」


 それだけ伝えるとじゃあねとだけいい、先生は戻って行った。


「なんだったんだ一体。 クラスでなんかあったのかな?」


 授業中に教室の中に入っていく勇気が無かった拓は、屋上で、時間をつぶすことにした。

 一番上まで、階段を登りきると不思議なことに屋上への扉が開いていた。


 ――誰か授業サボってるのかな?


 屋上に入ってみればそこには、少女がいた。


「僕と同じ、サボりがいるなんて……」


 拓は彼女の後ろ姿に向けて話をかけた。


「……」


 彼女からの返答はなかった。

 だが、振り返った顔を見た時に拓は、背筋が凍った。


「君は、昨夜の」

「昨夜の学生か。私、この学校であなたを監視することになったから」


 その言葉に、前のような殺意や、他の感情は感じられなかった。

 

「――そうなんだ。同じ学年なんだよね? あまり年も変わらなさそうだし」

「……」


 奈衣は返答する気はないらしく、拓の目を覗き込んでこようとする。

 居心地が悪くなった拓が話しかけようとした矢先、


「コレ」


 彼女から差し出されたのは白い小さな紙切れ。

 

「これは?」


 彼女は、フンッと鼻を鳴らし、拓の脇を通りぬけた。


「君は、もう戻れない」


 拓の質問から答えることなく、奈衣は屋上から去って行った。

 紙に視線を落とすと、


『放課後、教室で待て。昨夜の化け物の正体を教えてやる。』


 と書かれていた。

 一人屋上に残った拓は、明美にメールを打っていた。

 ――今日も少し帰りが遅くなると。


 

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