女学生の前に現れたのは、恋する怪異──あなたは一体、なぜ私をみつけたの

レトロな風合いの、物悲しさと切なさの、怖すぎない怪異譚。
前作から引き続いて、期待を裏切らないおもしろさだった。

昭和の初めの東京で、女学生の翠が出くわした不思議は、
人恋しさの有り様を潔癖で頑固な彼女の心身に突き付ける。
10代の少女が感じる、大人の恋愛観への「気持ち悪さ」。
強気なようでいて壊れやすげな翠が瑞々しくて、いとおしい。

翠の叔父の大久保は作家で怖がりで、ときどき少し頼もしい。
彼の周りには如何わしい新聞記者や猪突猛進な編集者がいて、
彼同様に変わった人々ではあるけれども、心強くもある。
翠は彼らと共に怪異に向き合い、ひとつ、前に進んでいく。

古めかしさが好ましい独特の文体に引き込まれる。
文章自体の形としては硬いけれど、なんというか、
雰囲気がとても柔らかく、同時に気品と風格がある。
お洒落だな、と憧れる。また続編も読みます。

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