帝都つくもかさね

作者 佐々木匙

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★★★ Excellent!!!

レトロな風合いの、物悲しさと切なさの、怖すぎない怪異譚。
前作から引き続いて、期待を裏切らないおもしろさだった。

昭和の初めの東京で、女学生の翠が出くわした不思議は、
人恋しさの有り様を潔癖で頑固な彼女の心身に突き付ける。
10代の少女が感じる、大人の恋愛観への「気持ち悪さ」。
強気なようでいて壊れやすげな翠が瑞々しくて、いとおしい。

翠の叔父の大久保は作家で怖がりで、ときどき少し頼もしい。
彼の周りには如何わしい新聞記者や猪突猛進な編集者がいて、
彼同様に変わった人々ではあるけれども、心強くもある。
翠は彼らと共に怪異に向き合い、ひとつ、前に進んでいく。

古めかしさが好ましい独特の文体に引き込まれる。
文章自体の形としては硬いけれど、なんというか、
雰囲気がとても柔らかく、同時に気品と風格がある。
お洒落だな、と憧れる。また続編も読みます。

★★★ Excellent!!!

美しい筆致で綴られる、少女の成長物語が嫌いな人っています? いませんよね。

前作では、怪異に触れるその時を切り取り、怪異と向き合う人の過去を浮き立たせることで、人間ドラマを描いておりました。しかし今作では、短編集でなく連作にすることで、怪異と触れ、時には対決することで、成長していく少女の心を丁寧に描いております。
その根幹のコンプレックスは、心ない人にはバカにされてしまいそうな、青く、しかし切実なものです。だからこそたどり着いた「他者の存在を認める」という結論は、人為らざる存在を相手取る怪異ものとして、百点満点と言えましょう。

また、脇を固めるサブキャラも、さすがに前作のメインキャラなだけあって、アクが強い。全てのサブキャラに思い入れがあり、登場の度に心が沸き立つのは、前作からキャラを大切にしている作者様だからこそと言えます。
だからと云って、前作を読まなければ面白さが半減するわけではありません。そもそも、作者様は雰囲気の表現力が抜群にうまく、心地よい文章を書かれます。初読の方でもすらすらと読み進めることができるでしょう。
で、「つくもかさね」を読み終わったら是非「つくもがたり」を読んでいただき、「あのかっこよさげなキャラ、こんなヤベエ奴だったのか……」みたいな楽しみかたをしてもらいたいですね。

未熟ながらも真摯に生きる少女と、それを優しく時に厳しく見守るダメな大人たちの魅力が、始まりから終わりまで詰まっています。安心して人にお勧めできる、素敵なお話です。

★★★ Excellent!!!

作者初の本格長編です。(きっと)(前2作は連作なので)
氏の作風を知っている身では、なかなか派手に展開するな…と感嘆したところも多々ありますし、何よりこの主役で、人物の遷移を描き切った事自体に驚いてます。
つらい展開もあるけれど(あっ読みづらくはないです)、いろんな人に、特に「昔は若かった貴方に」、追体験して欲しい。

お馴染みの面々も世界に生と彩りを加えます。大久保、おおいに飲みます。楽しいよ!(この主題(ひみつ)でちゃんと楽しいの、ほんとえらいと思う)

★★★ Excellent!!!

『つくもがたり』の続編で、女学生、羽多野翠が主人公。その時代の空気が鮮やかに描かれていることだけでなく、女学生ならではの息苦しさ、学校生活の閉塞感のようなものがみごとに描かれている。
学校の 怪奇は美しく、恐ろしく、そして、そこはかとなくうら哀しい。
勝気な主人公が、話をくいくい引っ張っていくのも見所。