5 番外編(1)『恵利ちゃんのニックネーム秘話』

※ 同人誌「ELZA FILE」およびCD「LZAデビュー!? 聖エルザクルセイダーズ番外編」所収


「恵利ちゃんは小さいときからとても健康的で明るい女の子でした。

 明日が小学校の入学式という日、この世に文字というものがあることをはじめて知りました。だれでも入学前にひら仮名くらいは書けるようになっているというのです。

 さあ、どうしましょう!

 恵利ちゃんに輪をかけておおざっぱな性格のお母さんは、「ガッコ行きゃ、書けるよーになるさ」と取り合ってくれません。

 この母親の言う通りにしていたら将来ロクな者になれないと、幼心にも直感していた恵利ちゃんは、その夜必死にひら仮名を練習しました。

 ところが八割がた終わったところで、根がおおらかな恵利ちゃんは、「こんなもんでいーだろ」とサッサと寝てしまったのです。

 翌日、真新しい名札を先生からもらった恵利ちゃんは、さっそく元気な野太い字で自分の名前を書きはじめました。

 でも、最後の文字が書けません。なぜなら、恵利ちゃんはマ行までしか覚えてなかったからです。

 運の悪いことに、まわりの連中は、まだ人間とはとても言いがたい、イヌやサル同然の下町の悪たれどもです。それを見つけると、鬼の首でも取ったようにワイワイはやしたてました。

 もちろん恵利ちゃんはアッという間にそいつらをたたんでしまいました。

 そして「こう書いたのはなァ、アタイにさからうとそーゆー目にあうって警告なんだぜ!」とムリヤリこじつけて、意地でも直そうとしませんでした。

 それ以来、恵利ちゃんは「おとしまえ」と自称しつづけるハメになったのです。

    END♡」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

聖エルザ Anniversary〈記念日〉― GradeUp Version ― 松枝蔵人 @kurohdomatsugae

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ