4 第0部『聖エルザクルセイダーズIV 乱入!』

 ※ メインストーリーの連載・文庫化が終了後、文庫オリジナルの形で書き下ろした作品。〝プレストーリー〟をイメージする作業に大いに新鮮さを感じたものだが、難航して発売を遅らせ、カンヅメを経験したのも今ではいい思い出である。執筆の途中、手塚治虫さんの訃報に接したことと昭和から平成への時代の変わり目に遭遇したことでよけいに忘れがたい作品となった。



〈プロローグ「妖艶なる死の女神」――The Appearance of "Goddess"〉

 I〜III巻の事件の前年秋、父親から聖エルザ乗っ取り作戦をまかすことを拒まれた『若』――姉小路征司郎は、密かに刺客を学園に送り込む。それは、ピッタリとしたボディスーツをまとい、素顔を完全に隠すド派手なメイクアップをほどこした妖艶な女ターミネーター「ゴッデス」だった――。


   ※   ※   ※   ※   ※


 長崎の料亭の一人娘・小栗まなみ(チクリン)は、ある日届いた一通の手紙がきっかけで、母親の母校である聖エルザ学園に編入するようにと言われ、心配する両親を残し、一人意気揚々と出発する。新幹線でも東京駅でもマイペースを通し、周囲を振りまわしながらようやくあこがれの東京に第一歩を記す。


 聖エルザになんとかたどり着いたチクリンだったが、眼の前で門が閉ざされ、守衛に「編入試験は明日だから出直すように」と言われる。どこかでサイフを失くして無一文のチクリンはしかたなく構内に忍び込み、無人のクラブの部室で一夜を明かすことに。


 一方、聖エルザ内の秘密のアジト『開かずの部屋』では、急死した前学園長から学園の数々の秘密を託されたばかりの孫娘・白雪和子(姫)と乙島恵利(オトシマエ)のコンビが、新しい仲間が編入試験にやって来るかもしれないという期待に胸をはずませていた。


 オトシマエは空手部室で自分の空手着にくるまって眠っているチクリンを発見。オトシマエは、ひどい風邪でフラフラのこの娘が編入試験会場にもぐり込む絶好の口実になると判断し、臨時の付き添いとしてチクリンを背負って会場に駆けつける。生徒代表の監督官である姫もそこに居合わせる。


 チクリンのライバルは三人。神戸から来た気取ったお嬢さま・山村美津子、京都のプライドの高い優等生・岩下順子、名古屋の地味な努力家タイプの秀才・式場真弓。試験があることすら知らなかったチクリンは、小学生くらいにしか見えない容姿に落ち着きなく変わる表情やとっぴな言動と行動からだれにも問題外と相手にされず、姫とオトシマエもまさか彼女が仲間だとは思わない。


 絶不調のチクリンがドタバタと試験問題と格闘する中で、事件がたて続けに起こる。最初は式場が睡眠薬を仕込んだ毒針で刺され、二番目は岩下が下剤を飲まされる。ライバルを蹴落とそうとする受験生の仕業としか思えず、どちらも最初はチクリンの行動がきっかけだったことから、ライバルたちはもちろんオトシマエと姫からも疑惑の眼を向けられることに。


 そんな逆境の中、チクリンは激しく落ち込んだりまた気を取り直したり。軽蔑や反感を買いながらも、持ち前の負けん気と好奇心から、疑惑を晴らしライバルに打ち勝つべく三人を探ろうとするチクリン。陰から観察する姫は、その特異な才能と行動力を感じ取り、警戒するよりもむしろ驚く。


 二日目に備えて、その夜は全員女子寮・エルザハイツでの宿泊となる。受験生は食事も部屋も入寮者とは隔離され、来賓宿泊室へ。オトシマエは付き添いを口実にチクリンと二人部屋に入る。


 チクリンが豪華な夕食に夢中になり寮生の分にまで手を出している間に、他の三人の動向を探ろうとしたオトシマエは、怪しいボディスーツの女を発見して尾行し、そのド派手な容姿と指示を出す男との密会を目撃。その女は三人の受験生のうちのだれかにちがいなく、男に「今夜中にケリをつける」と言い放つ。


 チクリンが自分の部屋へもどると、ボディスーツに身を固めた怪しい女が自分の風呂敷包みを探っているところに遭遇。女は不敵な笑みを浮かべ〝ゴッデス(女神)〟と名乗って窓から逃走する。


 体型からチクリンがゴッデスではありえないとわかったオトシマエは、二人で協力して他の三人を探る。部屋から返事のなかった山村が怪しいとにらみ、化粧を落とすなら風呂場にちがいないとそこへ向かう。だが、山村は全裸で倒れており、チクリンは窓から逃げる女のコスチュームを目撃する。


 山村を自分たちの部屋に担ぎ込むと、オトシマエはチクリンにくれぐれも気をつけるように言い含め、学園に隣接する白雪邸へ。姫は第三の事件が起こることをとっくに予想しており、ゴッデスのことを聞くと二人そろって聖エルザに駆けつける。


 気を失っている山村とともに残されたチクリンは、手先の器用さと工夫の才能を生かして武器やトラップをこしらえたちまち反撃態勢を整える。すると奇妙な物音が聞こえ、後を追ったチクリンが二人が消えた荷物管理室の鍵穴をのぞくと、なんとゴッデスがもう一人を拷問しているところだった!


 二人の会話から、ゴッデスが式場で、リンチされているほうが岩下だと判明。しかも、おたがいが毒針と下剤を相手に仕掛けた加害者だとわかる。つまり、両方とも別々の何者かからの指示を受けて送り込まれて来ていたのだ。チクリンはうっかりゴッデスに見つかり恐怖の叫びを上げる。


 式場と岩下ばかりかチクリンの姿まで消えていることを知った姫とオトシマエ。チクリンがしっかり迎撃態勢をとっていたことに驚き、姫はチクリンの正体に言及しかけるが、そこに大きな悲鳴が聞こえてくる。荷物管理室で岩下を発見した姫は彼女が学校側のスパイだと見抜き、黙って姿を消すように命じる。


 ゴッデスは恐怖のターミネーターぶりを発揮してチクリンを執拗に追う。歩み寄るスピードはゆっくりだが、その姿は自信に満ち、着実で少しの乱れもない。チクリンは大騒ぎを巻き起こしながらエルザハイツの中を逃げ回る。オトシマエが何度もゴッデスに立ちはだかるがそのたびにはね返される。


 ゴッデスの脳裏に、チクリンとオトシマエが最初から協力関係にあったのではないかという疑念がきざす。しかもエルザハイツを脱出したチクリンに何事か耳打ちする姫の姿を眼にし、ゴッデスはターゲットがその三人であることを確信する。


 姫はチクリンとオトシマエにある作戦を伝え、人気のない礼拝堂へとゴッデスを誘い込む。追いつめたと思い込んだゴッデスはまんまとワナにかかる。姫は明快な推理を展開し、ゴッデスの無類の強さを支えているのはだれにも正体を覚られないという絶対の確信であることを見破る。


 それでもあざ笑うゴッデスに決定打を与えたのは、彼女がチクリンの突飛な行動や言動の裏に巧妙に隠された意図に気づかず、軽んじることによってチクリンに逆に追いつめられていったのだという姫の鋭い指摘だった。ゴッデスは自信を崩され、茫然自失して聖エルザを立ち去る。


 姫とオトシマエに、ゴッデスばかりか彼女たちさえあざむいていた手腕の見事さを驚きと賞賛の眼でたたえられてご機嫌のチクリンだったが、彼女にはそんな意図だとか考えなどまったくなく、その場その場でただ思いつくままに行動していただけだったのだ。それがわかると、姫でさえ完全にカン違いさせられていたことに、二人はあらためて驚嘆する。


 そしてゴッデスが所持していたチクリンのサイフに入学許可証が見つかり、五角形のペンダントを持つ仲間だったことも判明する。こうしてチクリンはめでたく聖エルザに編入し、姫とオトシマエに温かく迎えられることになった。


  ※   ※   ※   ※   ※


エピローグ「恵利ちゃんの編み物日記II、そしてもうひとつの光景」――Eri's

Secret Diary & Another Scene〉

 オトシマエによるその後の出来事の報告。今さら入学許可証を持ち出すわけにはいかず、チクリンは一人で残りの理科、社会のテストを受けてかろうじて合格。三人はチクリンの希望でケーキやアイスクリームを山ほど買い込んでお祝いする。

 一方、ゴッデスを派遣して白雪たちを殲滅する作戦に失敗した『若』。彼はその原因が、父の息がかかった学校側も編入試験にスパイを潜入させていたことで作戦に齟齬が生じたのだと結論づけ、あらためて聖エルザの乗っ取りにみずから乗り出すことを宣言する。


 









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聖エルザ Anniversary〈記念日〉― GradeUp Version ― 松枝蔵人 @kurohdomatsugae

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