3 第3部『聖エルザクルセイダーズIII 聖戦!』

〈インターリュード「凶獣たちの夜」―― The Beastly Night〉

 梅雨の晴れ間のある夜。学園の屋上に二つの影がある。クルセイダーズの行方の調査がはかどらないことを報告しようとする小男に対して、『若』はいきなり攻撃をしかけ、徹底的にいたぶる。それが異様なペアを組む二人の練習風景なのであり、うさ晴らしなのだった。


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 クルセイダーズ五人は〝敵〟の眼を逃れ、廃屋となっていた伊豆山中の拳法道場に隠れ住んで新生活を始める。コックリは建物の修理や水汲みに追われ、チクリンは自炊や風呂たきを担当し、オトシマエは暇を見つけては聖エルザの偵察に向かう。


 姫はミホとともにパリへ旅立つ。疎遠になっていた父親から聖エルザにまつわる秘密を聞き出すことが目的だった。しかし、母親との再会もつかの間、父は家に先回りした敵によって殺され、「和子へ」と表書きされた封筒の中の手紙は奪われた。かろうじて六個めのペンダントが残されており、姫は父の血のダイイングメッセージから謎の古文書を発見する。


 帰国した二人はチクリンと合流し、そのまま九州へと向かう。姫は父が残した古文書を解読して天草の小さな教会にたどり着き、自分たちクルセイダーズは江戸時代初期にキリシタンが幕府軍と戦った「天草の乱」の首謀者・天草四郎の直系の子孫であることを突き止める。


 聖エルザは全生徒強制参加の夏合宿に突入する。成績競争で優等生と劣等生を徹底的に差別するクラス編成と、各クラス間のコミュニケーションを厳しく遮断する情報操作により、生徒たちはしだいに『若』に従うようマインドコントロールされていく。水谷を切り捨てた滝沢礼子はそんな『若』に共闘を申し出る。


 空手部のメンバーをなんとしても救出したいオトシマエは、コックリを誘惑して協力させ、聖エルザに潜入。キャティや若松たちとの再会を果たすが、コックリはオトシマエを出し抜いて一人三バカの救出に向かい、彼らを逃すが水谷によって敵の手に落ちてしまう。


 空手部が合流したことで、伊豆の隠れ家の生活はさらに充実し、彼らはそこをもう一つの〝理想の学園〟として戦闘訓練と勉学に励む日々を送る。姫は古文書の解読を進め、天草四郎から聖エルザへと受け継がれてきた精神と理想、日本の歴史にまでおよぼした影響をミホたちに語る。そして、四郎の正統に連なる現代の〝えるざ〟こそが学園の継承者であり、それがミホであると断言する。


 一人聖エルザに取り残されたコックリは、成績で『若』を抜いて権威を失墜させ、堅固に構築された体制を内部から崩そうとするが果たせない。そんなコックリの個室に水谷が現れ、『若』の支配の実態と生徒たちが置かれた悲惨な状況を見せつけ、「現状を正面から見すえる覚悟が必要だ」とコックリの甘さをたしなめる。水谷は劣等生クラスから最上位クラスへと必死にはい上がってきたのだという。


 そんなコックリと水谷にさらに残酷な現実を見せつけるように、『若』が二人をエリートクラスの晩餐会へと招く。やっとドレス姿の滝沢と再会した水谷だったが、彼の代わりに『若』という味方がいる、と言われて激昂。逆に『若』に酷いリンチを受けて退学を宣告される。それを目撃したコックリは『若』の打倒を誓う。


 聖エルザを偵察するチクリンたちの前に水谷が出現。決闘したオトシマエは、水谷が『若』に痛めつけられて心身ともに傷ついていることを知り伊豆へ連れ帰る。彼らの生き生きした生活ぶりを眼にして心を癒した水谷は、〝えるざ〟であることの重圧に悩むミホに励ましを与え、重要な情報を残して立ち去る。


 水谷が教えたのは、夏合宿最終日の打ち上げとして仮面舞踏会という怪しげなイベントが開催されることだった。そこで『若』が何事かをたくらんでいるとにらんだ姫は、その日を決戦の日として聖エルザを目指すことを全員に伝える。


 ついに強制夏合宿が終わり、大改装された体育館オーバルホールで仮面舞踏会が始まる。『若』は大掛かりな3D映像を駆使するなどして生徒を幻惑。姫の父の手紙を根拠にして、天草四郎を始祖とする〝えるざ〟の歴史を滝沢に演じさせ、彼女こそが現代の〝えるざ〟であり学園の正統な継承者であると主張する。そしてなんと、滝沢と結婚することで自らが支配者になることを宣言する。


 父が書き残した手紙にある「滝沢礼子に従い、助力せよ」という言葉に衝撃を受ける姫。しかし、ミホは、両親が亡くなったのが姫の父に会いに行く途中であり、彼がミホの存在を知らないままだったことに気づく。「先代〝えるざ〟の死後に子孫同士の間に生まれた最初の娘」という条件にかなう本当の〝えるざ〟は、滝沢礼子より誕生日が早いミホだったのだ。


 チクリンと空手部は戦闘に備えて体育館の外で準備を進めるが、『若』と双極拳のペアを組む手下に捕まってしまう。水谷に危機を救われたチクリンは、協力して新たな作戦に取りかかることに。


 ミホに学園支配の根拠を崩された『若』は、暴力でクルセイダーズを排除するよう命令。そこにチクリン率いる兵器部隊と水谷が奇襲攻撃を仕掛け、『若』の陰謀の動かぬ証拠突きつける。両者はたちまち乱戦に突入し、生徒を巻き込んで激しい戦闘が繰り広げられる。コックリは必殺技〝外道拳・胡蝶の舞〟でついに『若』を倒す。


 一方、地下洞窟へのカギとなるすべてのペンダントを奪った滝沢は、姫とミホを道連れにして黄金の聖母像が安置された礼拝堂へと到達。時限爆弾を仕掛けて聖母像とともに地下に埋もれてしまおうとする。姫は滝沢を説得しようと、最後の謎を明かす。それは姫と滝沢礼子が、姫の父を共通の〝父親〟とする〝姉妹〟だという事実だった――。


 果てしない戦いは、覚醒した生徒たちの参戦によってクルセイダーズの勝利に帰す。地底の礼拝堂に最後まで残った姫と滝沢は、爆発の寸前に姫の機転でかろうじて脱出して生き延びた。すべてが解決した学園には「聖エルザ、ばんざーい!」の歓呼の声がいつまでも響きわたる。


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〈エピローグ「忘れない、あなたのことを」―― I Can't Quit You, Reiko〉

 事件で負傷した滝沢礼子は湘南のコックリの実家・宇奈月医院で療養。そこにミホから一通の手紙が届く。聖エルザは「生徒の、生徒による、生徒のための学園」として再建されることになった、と。付き添っていた水谷が「こんなおれたちでも、待っていてくれる人間がいる……」とつぶやく。

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