牡鹿の姉 エピローグ

「おねえちゃん、行っちゃったよ」


 森の入口で保護された僕は、両親にそう伝えた。


 両親はその場で泣き崩れ、その後、町内の大人たち総出で山狩りを行ったらしいが、結局、おねえちゃんは見つからなかった。


 僕はといえば、近所のおじさんたちに付き添われて家まで帰り、布団の中で少しだけ泣いて、眠った。





 大人になってから一度だけ、立派な牡鹿が岩山の上からこちらを見ているのに気付いたことがある。


 牡鹿はじいっとこちらを見つめた後、飛び跳ねるようにどこかへと去っていった。




 おねえちゃんはきっとまだ――どこよりも自由で、どこよりも美しい、あの場所を駆けているのだ。

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極楽少女 黄鱗きいろ @cradleofdragon

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